ABSTRACT 1511(P5-14)
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肝細胞癌症例における,反復配列を持つ癌抑制的遺伝子の変異解析:榎本あき矢1,2,高野 靖悟,高木 恵子,岩井 重富,江角 真理子1,21日大・医・病理,2同・三外)

Mutation analysis of nucreotide repeat sequence-containing tumor suppressive factor genes in human hepatocellular carcinomas:Akiya ENOMOTO1,2,Seigo TAKANO2,Keiko TAKAGI2,Shigetomi IWAI2,Mariko ESUMI1 (1Dept.of Pathol.,23rd Dept.of Surg.,Nihon Univ.Sch. Med.)

【目的】我々はこれまでに肝細胞癌発癌にミスマッチ修復異常が関与するか否かを調べるために,microsatellite instability (MI) を検討してきた。その結果一部にMI(+)の症例を見出した。そこで今回これらの症例を中心に,ミスマッチ修復異常の標的遺伝子として知られるTGF-βRIIおよびBAX遺伝子の変異解析を行った。さらに一部の癌については,TGF-βの作用に必須で,反復配列の異常が報告されているInsulin like growth factor-II receptor(IGF-IIR)遺伝子の変異解析も試みた。【対象及び方法】48例の肝細胞癌症例のうち,MIが認められた6例(単発2例,他臓器癌合併4例)と,MIが認められなかった42例について,癌部非癌部よりDNAを抽出した。TGF-βRIIの(A)10 領域とBAX遺伝子の(G)8領域およびIGF-IIR遺伝子の(G)8 領域をターゲットとしてPCRを行い,ゲル電気泳動パターンと塩基配列決定により変異の有無を決定した。【結果】MI(+)2例を含む38例において,TGF-βRII,BAXおよびIGF-IIR遺伝子の変異は認められなかった。しかしMI(+)の他臓器重複肝細胞癌4例では,TGF-βRIIの1塩基欠失を示すシグナルが観察された。【考察】MI(+)の単発肝細胞癌は少ない。MI(+)であっても大腸癌で見られる標的遺伝子の変異は認めにくく,肝発癌機構におけるミスマッチ修復異常の関与は低いと考えられる。しかし,他臓器重複肝細胞癌においては,一部の癌にミスマッチ修復異常の関与する可能性があると考えられる。