ABSTRACT 1598(P5-21)
マイクロディセクションおよびヘテロ接合性消失(Loss of heterozygosity, LOH)解析による腫瘍クローンの発生進展に関する研究 (乳癌および膵粘液産生腫瘍を中心として):藤井 博昭、白井 俊一 (順天堂大医第二病理)
Loss of heterozygosity (LOH) analysis on microdissected human tumor demonstrates clonal progression and heterogeneity. Hiroaki FUJII, Toshikazu SHIRAI (2nd Dept. of Pathology, Juntendo University)
ヘテロ接合性消失(Loss of heterozygosity:LOH)解析に際し、私共は、腫瘍病変部の病理組織学的、形質的に同じ、あるいは異なる多数の部位から詳細なmicrodissection により腫瘍DNAを抽出し分子遺伝学的解析に用いた。多数の異なる染色体部位を網羅するmicrosatellite marker によるLOHの解析を組み合わせる事により、腫瘍の発生進展に伴い、また組織異型度、分化度等と絡んだ腫瘍クローンの細かな変化を追跡できることを乳癌および膵粘液産生腫瘍を中心にして紹介する。乳癌の乳管内癌および浸潤癌腫瘍の発育進展に伴うLOH のパターンはLOHのhomogeneity(均一性), heterogeneity(LOHの不均一性), intralesional progression(LOHの蓄積進展), intralesional divergence(枝分かれ現象)などに分類された。これらの組み合わせにより腫瘍は進展すると考えられた。また、これに基づき、腫瘍発生進展におけるクローンの進化系統樹とも言えるものを作成できた。再発癌、多重癌、転移性腫瘍の解析にも有用であった。 膵粘液産生腫瘍の発生進展にも同様の遺伝的不均一性が認められた。