ABSTRACT 1604(P5-21)
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ヒト細胞株におけるh-l(3)mbt遺伝子の発現と機能:
古閑比佐志、広田亨、松井真一、佐谷秀行(熊本大・医・腫瘍)

Expression pattern and its function of h-l(3)mbt on various human cell lines: Hisashi KOGA, Toru HIROTA, Shin-ichi MATSUI, Hideyuki SAYA (Dept. Tumor. Genet. Biol. Kumamoto Univ.)

[目的]昨年我々はハエ癌抑制遺伝子のヒトホモローグであるh-l(3)mbt遺伝子について報告したが、ヒト細胞における機能まで言及できなかった。今回はh-l(3)mbt遺伝子のヒト細胞における機能を明らかにする目的で、各種ヒト細胞株における発現をmRNA及び蛋白レベルで調べるとともに、Cre/LoxP系による遺伝子発現ON/OFFシステムを用い、この遺伝子の発現がもたらす細胞形質変化について解析を行った。
[方法]1)h-l(3)mbt遺伝子のクローニングに際し、その重要な機能ドメインと考えられるSPM domain内に二つの異なる配列を有するアイソフォーム(Type I, II)を見出したので、この領域を囲むかたちでプライマーを設定し正常ヒト末梢血及び各種細胞株から得られたmRNAを用いてRT-PCRを行った。蛋白レベルの発現はh-l(3)mbt遺伝子産物に対する4種類のポリクローナル抗体を作製後、各種ヒト細胞株でウエスターンブロット及び免疫染色を行うことで解析した。2)Cre/LoxP系によるON/OFF制御システムの構築:ON/OF発現用カセットプラスミドにh-l(3)mbt cDNAを組み込みh-l(3)mbtの発現の認められないVA13及びU251細胞株に導入して安定発現株を得た。この細胞株に対してCre recombinase発現アデノウイルスを感染させ細胞形態の変化を観察した。
[結果]1)正常末梢血ではType Iの発現が優位に認められる例が存在したが、癌細胞株ではType IIが優位に発現していた。細胞株によっては蛋白レベルの発現が著しく低下していた。また免疫染色ではh-l(3)mbt遺伝子産物は細胞周期を通じて核・染色体に一致して存在していた。Cre/LoxP系による発現で、2種の細胞株またType I・IIのいずれでも多核細胞の出現が認められた。
[結論]h-l(3)mbtは癌細胞株においてmRNA及び蛋白レベルでその発現が制御されている可能性が示唆された。またそのヒト細胞における機能は染色体上での転写制御あるいは複製制御に関わる可能性が考えられ、現在細胞周期を含めた解析を進行中である。