ABSTRACT 1607(P5-21)
神経線維腫症1型(NF1)遺伝子産物を介する細胞内シグナル伝達機構の解析: 徳王宏1,3, 木本眞順美2, 古閑比佐志1, 辻英明2, 小野友道3, 菊池章4, 佐谷秀行1, 荒木令江1 (1熊本大・医・腫瘍医学, 3同皮膚科, 2岡山県立大・保健福祉・栄養, 4 広島大・医・生化学)
Analysis of cellular signaling via Neurofibromatosis Type1 tumor suppressor gene product: Hiroshi TOKUO1, Masumi KIMOTO2, Hisashi KOGA1, Hideaki TSUJI2, Tomomichi Ono3, Akira KIKUCHI4 Hideyuki SAYA1, Norie ARAKI1 (1Dept. Tumor. Genet. Biol. 3Dept. Dermatol.,Kumamoto, Univ.Sch. Med., 2Dep. Nutrition, Okayama Prefecture Univ. 4Dept. Biochem. Hiroshima Univ. Sch. Med.)
【目的】神経線維腫症1型(NF1)遺伝子の異常による多発性神経線維腫形成機構を解明するため、NF1遺伝子産物(NF1蛋白)の機能解析を行っている。NF1蛋白を介した細胞内シグナル伝達機構を明らかにする目的で、NF1蛋白に特異的に会合する細胞内蛋白質を単離・同定し、これらの分子の相互作用を解析した。 【方法】各種GST-融合NF1フラグメント固相化カラムを用い、牛脳抽出液よりそれぞれの融合蛋白質に特異的に結合する蛋白質の単離・精製を行った。単離した蛋白質は断片化・精製後、各ペプチドのアミノ酸配列を決定した。NF1蛋白と結合蛋白質の相互作用の解析は、ヒトglioblastomaSY5Y細胞、ヒトfibroblastVA13細胞, Hela細胞, 及びCos細胞可溶化蛋白質の各抗体を用いた免疫沈降・Western-Blottingに依った。NF1のPKAリン酸化能、RasGAP活性の測定は細胞の免疫沈降によるendogenusNF1を用いた。【結果・結論】NF1蛋白RasGAP domain (GST-GRD1)には分子量70KDと30KD、Cys rich domain(GST-CSRD)には、80KD, 70KD, 47KD,46KD, 36KD, 29KD, 及び25KD、C末端側(PKA, MAP kinase修飾部位)GST-CTDには40KDの蛋白質が特異的に結合することが判明した。このうちGST-CTDに結合する40KDの蛋白質は、6つの断片化ペプチドのアミノ酸配列全てがラット及びヒトのN-G, N-G-dimethylarginine dimethylaminohydrolase (DDAH)の部分配列と一致し、更に抗ラットDDAH抗体に交叉性が確認された。又、SY5Y細胞の可溶化物のGST-DDAH結合画分、及びmyc-DDAH 強制発現Cos細胞の抗myc抗体による免疫沈降物中にendogenusなNF1蛋白がそれぞれ検出され、細胞内でNF1蛋白とDDAHが結合していることが判明した。細胞内NF1蛋白のPKAによるリン酸化能はDDAH存在下で濃度依存的に変化した。NF1蛋白はC末端を介して、細胞内NO産生の制御系に関わる酵素DDAHと会合し、腫瘍抑制の細胞内シグナル伝達に関わっている可能性が示唆された。