ABSTRACT 1611(P6-1)
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がん細胞におけるATP依存性プロテアーゼLonの発現異常:村松知成1,北中千史1,杉山晶規2,野口耕司1,口野嘉幸1(1国立がんセ・研・生物物理,2東理大・基礎工)

Abnormal expression of an ATP-dependent protease Lon in cancer cell lines:Tomonari MURAMATSU1,Chifumi KITANAKA1,Akinori SUGIYAMA2,Kohji NOGUCHI1,Yoshiyuki KUCHINO1(1Biophys. Div.,Natl. Cancer Ctr. Res. Inst.,2Dept. Biol. Sci. Tech.,Science Univ. of Tokyo)

Lonはペプチド分解の際にATPの加水分解を必要とするユニークなプロテアーゼで、大腸菌からヒトにいたるまで高度に保存されている。哺乳動物のLonはミトコンドリアに局在する酵素であるが、その機能についてはいまだ明らかでない。大腸菌ではlonの人為的高発現は細胞に致死的であること、また酵母ではミトコンドリアの機能維持に重要な働きをしていることなどがこれまでに報告されている。哺乳動物の正常組織中では心臓での発現が最も高いことから、その発現は細胞内のミトコンドリアの数に依存していると考えられてきた。ところが今回種々のがん細胞におけるLONの発現を調べたところ、腎芽腫やある種の肝がん細胞において心臓の数倍以上の高いレベルで発現していることを見いだした。これらがん細胞でのミトコンドリアの数は対応する正常細胞のものと変わらないことから、がん細胞で高発現しているLONには酵母のものとは異なった機能が存在すると考えられる。とくにミトコンドリアは最近の研究からアポトーシス制御に関わる重要な細胞内小器官であることが明らかになってきたことからも、がん細胞におけるLONの高発現の意義・実態の解明に興味がもたれる。現在この点を解明するために、LONを高発現しているがん細胞からLON cDNAの単離・クローニングを行い、正常のものとの構造の比較や遺伝子(LON cDNA)導入実験などを行っている。