ABSTRACT 1613(P6-1)
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ラット肝癌における細胞質性チミジンキナーゼ活性のパターンとリン酸化:林玲,イスラム・ムハモド・ムジャハル,黒岩波子,藤村真示(千葉大瘉聶生化一)

Phosphorylation and dephosphorylation of cytosolic thymidine kinase in rat hepatoma JB1 : Ling LIN, Md.Muzharul ISLAM, Namiko KUROIWA, Shinji FUJIMURA (Dept.Biochem.Chiba.Univ. Sch. of Med.)

チミジンキナーゼ(TK) の細胞質性アイソザイムは、細胞増殖に伴い発現され、リン酸化と脱リン酸化を受ける。これまで、ラット肝癌の細胞質分画は、イオン交換カラム(DEAE-5PW)を用いたHPLCで、TK活性のパターンで2つのピーク(TKIとTKII)を示した。ここでは、この活性パターンとTKタンパクのリン酸化について検討した。1) ラットに移植した肝癌JB1の細胞質分画に、アルカリホスファターゼ標品を加えても加えなくても、20℃、8 時間孵置したとき、TK活性はほとんどなくなり、TKIのみが見られた。このとき、ホスファターゼ阻害剤とされるNaF、オカダ酸、β-グリセロリン酸を加えると、活性は再び出現したが、ほとんどがTKIIであった。これはTK活性が阻害剤処理で安定化したためと考えられる。ホスファターゼとホスファターゼ阻害剤でそれぞれ処理した細胞質分画を混ぜるとTKIとTKIIの両ピークが確かに検出された。プロテンキナーゼ阻害剤であるスタウロスポリンを加えたときは、TK活性が低下した。2)肝癌 JB1培養細胞を対数増殖期にやはりホスファターゼ阻害剤であるバナジウム酸塩で処理すると、TKIがほとんど消え、TKIIのみが強く残った。TKIとIIはTKタンパクが脱リン酸化とリン酸化をうけ現われたもので、TK活性はTKタンパクに対するキナーゼとホスファターゼによって調節されると考えられる。