ABSTRACT 1616(P6-1)
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ラット肝GST-P陽性のシングルセル、ミニフォーカスの発生に先行する生化学反応の検討:佐藤公彦、早狩誠、高畑武功、熊野高行、土田成紀、畑山一郎(弘前大・医・2生化、青森県環境保健セ)

Biochemical reactions precedent to the induction of GST-P- positive single cells and mini-foci in the rat liver: Kimihiko SATOH, Makoto HAYAKARI, Takenori TAKAHATA,Takayuki KUMANO1, Ichiro HATAYAMA2 , Shigeki TSUCHIDA(Second Dept. Biochem., Hirosaki Univ. Sch. Med., Aomori Pref. Inst. of Health & Env.)

(目的)ラットにDENの一回i.p.投与後、2、3日で誘発されるGST-P強陽性の単一ないし数個の細胞(シングルセル、ミニフォ−カスと命名)はfoci、noduleの(起始細胞、initiated cell、前癌前駆細胞)と見なされている。これらの陽性細胞の誘発に先行する生化学的変化とGST-Pの生理機能を検討した。
(方法および結果)DENの投与(SD雄、i.p.200mg/kg)後、肝中のミクロゾ−ムの著しい損傷とGSHの速やかな減少を認めた。前者は、ER膜上のmixed function oxidaseによるDENの活性化に基づく自殺的傷害と見なされた。GSHの合成阻害は、4hまで見かけ上完全に阻害されるのに対し、消費は影響されなかった。Cysの上昇、BSO投与、細胞質酵素の活性測定その他により、この過程はGSH合成酵素 I (γガンマGCS)の活性阻害に基づくものと推定された。DEN投与により過酸化脂質の酸化が促進され、アクロレインや4-ヒドロキシアルケナ−ルなどの不飽和アルデヒドの発生による同酵素活性の阻害が考えられる。最近、我々は、GST-Pの活性部位(H-site)の疎水性は他のGST分子種に比較して低い事実を明らかにした。これは、GST-Pが疎水性の低い、即ち水溶性の発癌剤の解毒代謝に関与し、GST-Pを大量に発現している前癌細胞が生体防御的に働いている可能性を示唆する。不飽和アルデヒドの免疫組織化学検索その他により陽性細胞発生過程およびGST-Pの生理機能を検討中である。