ABSTRACT 1622(P6-2)
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悪性細胞におけるムチンコアGlcNAcβ1→6GalNAcα上のシアリルLexおよびLexの特異的検出−NCC-ST-439の認識抗原について:隈元謙介1,井澤峯子1,光岡ちか子1,平岩 望1,山田哲司2,広橋説雄2,石田秀治3,木曽真3,神奈木玲児1(1愛知がんセ・2病,2国立がんセ・病理,3岐大農・生物資源利用学)

Specific detection of sialyl Lewis X determinant carried by GlcNAcβ1→6GalNAcα mucin core structure by NCC-ST-439 antibody: Kensuke KUMAMOTO1, Mineko IZAWA1, Chikako MITSUOKA1, Nozomu HIRAIWA1, Tetsuji YAMADA2, Setsuo HIROHASHI2, Hideharu ISHIDA3, Makoto KISO3, and Reiji KANNAGI1 (1Exp. Pathol., Aichi Cancer Ctr., 2Dept. Pathol. Nat. Cancer Ctr., 3Dept. Appl. Bio-org. Chem., Fac. Agric. Gifu Univ.)

NCC-ST-439抗原は、乳癌をはじめとする腫瘍のマーカーとして用いられている。その認識抗原についてはこれまで、シアル酸を有する高分子ムチン様糖蛋白質である事が知られていたが、その抗原構造の詳細は不明であった。我々は本抗体が、ムチンコアGlcNAcβ1→6GalNAcα上のシアリルLexを特異的に検出すると見られる成績を得たので報告する。【方法および結果】1.ヒト乳癌培養細胞7株におけるシアリルLexおよびNCC-ST-439抗原の発現をフローサイトメトリーにて検索したところ、全7株がシアリルLex陽性、うち3株がNCC-ST-439抗原陽性であった。NCC-ST-439抗原陽性株はいずれもシアリルLex陽性株であった。2.シアリルLex・NCC-ST-439抗原ともに陰性の乳癌細胞株にフコシルトランスフェラーゼFuc-T VIをトランスフェクトしたところ、シアリルLexが陽性となり、NCC-ST-439抗原も陽性となった。これによりNCC-ST-439の抗原エピトープには、フコースが含まれる事が判明した。3.純品糖鎖とNCC-ST-439抗体との反応性をELISAにて検索したところ、本抗体はNeuAcα2→3Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAcβ1→6GalNAcα1→Rと強く反応し、NeuAcα2→3Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAcβ1→6Galβ1→RおよびNeuAcα2→3Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAcβ1→3Galβ1→Rとは反応性が極めて弱かった。【考察】以上から、従来糖鎖性腫瘍マーカーとして用いられてきたNCC-ST-439抗原は、ムチンコアGlcNAcβ1→6GalNAcα上のシアリルLexであり、セレクチンへの結合活性を持つと考えられた。乳癌症例における本抗原の出現は、予後と逆相関する事が知られており、その機序についてさらに検索する予定である。