ABSTRACT 1623(P6-2)
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サイクリックシアル酸形成によるヒト白血球のセレクチン・リガンド活性の調節: 光岡ちか子1,木村尚子1,大森勝之2,今場司郎3,石田秀治3,木曽 真3,神奈木玲児11愛知がんセ・2病,2京大医・検査,3岐大農・生物資源利用学)

Regulation of selectin ligand activity on human leukocytes through the formation of cyclic sialic acid in 6-Sulfo sialyl Lewis X: Chikako MITSUOKA1, Naoko KIMURA1, Katsuyuki OHMORI2, Shiro KONBA3,Hideharu ISHIDA3, Makoto KISO3, and Reiji KANNAGI1 (1Exp. Pathol., Aichi Cancer Ctr., 2Dept. Lab. Med., Kyoto Univ. Sch. Med. 3Dept. Appl. Bio-org. Chem., Fac. Agric. Gifu Univ.)

我々は昨年、シアリル6-スルホLeに対する特異抗体G152を樹立した際に、独特の反応性を持つ抗体G159を得た。本抗体は、極めて微少な有機合成の副産物に対して生じたもので、その認識抗原は各種ヒト白血球に広く分布していた。この認識抗原は、シアリル6-スルホLeから生じた代謝物質と考えられる。【方法および結果】1)抗体G159の認識する合成シアリル6-スルホLex中の抗原は、シアリダーゼ耐性である事から、シアル酸部分が修飾されたものと考えられた。この合成副産物は、無水条件下での過度の脱アセチル化によって生じたと推定されたので、シアル酸のアセチル基を欠くN-de-acetylシアリル6-スルホLeをあらたに有機合成し、こ0.7 mgをメタノール(1.0 ml))中にて、WSC 1.0 mgによって12時間、室温にて脱水処理した。この反応産物は、G159抗体と良く反応し、G159抗体の作成時に抗原に用いた合成シアリル6-スルホLe中の抗原とTLC易動度が一致した。これにより、G159の認識抗原はシアリル6-スルホLeが脱アセチル化を受け、さらに脱水により環状構造となった、サイクリックシアル酸をもった6-スルホLeであると考えられた。環の構造は、アルカリ耐性であることからラクトン環よりむしろラクタム環が考えられる。2)G159認識抗原のヒト白血球での分布はセレクチンリガンドの分布とほぼ並行し、ヒト好中球、単球、ヘルパーメモリーT細胞、NK細胞に発現していた。また、これらに由来する白血病細胞株にもしばしば陽性であり、TPA刺激したリンパ系細胞に出現した。細胞に発現したG159認識抗原もシアリダーゼ耐性であった。【考察】以上から、ヒト白血球のシアリル6-スルホLeは、細胞中でN-de-acetylシアリル6-スルホLeに変化し、さらに脱水されてサイクリックシアリル6-スルホLeになり、この変化によってセレクチンへの結合活性が不活化される代謝経路が存在すると思われる。