ABSTRACT 1624(P6-2)
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悪性細胞におけるセレクチンリガンドのシアル酸部分の修飾について:金森審子1,木村尚子1,光岡ちか子1,大森勝之2,田口修1,神奈木玲児1(1愛知がんセ・2病,2京大医・臨床検査医学)

Modification of sialic acid moiety in carbohydrate ligand for selectins expressed on human malignant cells: Akiko KANAMORI1, Naoko KIMURA1,Chikako MITSUOKA1, Katsuyuki OHMORI2, Osamu TAGUCHI1, Reiji KANNAGI1(1Exp. Pathol., Aichi Cancer Ctr., 2Dept. Lab. Med., Kyoto Univ.)

悪性細胞表面の糖鎖と、血管内皮細胞のセレクチンとを介した細胞接着が、癌の血行性転移に深く関与すると考えられている。セレクチンのリガンドは一般にシアリルLe、シアリルLeとされているが、その構造の詳細についてはまだ不明な点が多い。今回我々は、悪性細胞のこれらセレクチンリガンドのシアル酸部分に、heterogeneityがあることを見いだしたので報告する。【方法】我々はこれまで、、抗シアリルLe抗体は大きく二つのグループに分かれ、一方のグループ(Classical型抗シアリルLe)はシアル酸とGalβ1→4GlcNAcβの基幹構造部分を厳密に認識するのに対し、他方のグループ(Variant型抗シアリルLe)はシアル酸とフコース部分のみを強く認識し、Galβ1→4GlcNAcβの基幹構造部分の修飾によって結合が阻害されにくいことを報告してきた。Variant型抗シアリルLex抗体は、とくにリンパ球系の悪性細胞に良く発現する特徴がある。Classical型抗シアリルLeとしてFH-6, SNH-3, CSLEX-1を、Variant型抗シアリルLe抗体として2H5, 2F3, HECA-452の各抗体を用い、シアリダーゼ処理を加えヒト悪性細胞における抗原の発現をフローサイトメトリーにて解析した。シアリルLe陽性細胞の解析には、2D3, 1H9およびN19-9抗体を用いた。抗体の純品糖鎖との反応性はELISAで検索した。【結果】(1)ヒト成人T細胞性白血病細胞株は通常Variant型抗シアリルLex抗体のすべてと良く反応するが、細胞株のうちに、2F3, HECA-452とは良く反応するが、2H5とは反応しないものを見いだした。また、症例の末梢血中の白血病細胞においても、2F3と2H5との反応性が大きく異なるものを見いだした。(2)2H5, 2F3, HECA-452の各抗体のシアリルLeに対する反応性の相違点を、シアル酸部分に修飾を加えた純品シアリルLe糖鎖で確認したところ、2F3, HECA-452はシアル酸のC-5位のN-acetyl基を厳密に認識しているのに対し、2H5の反応性はこの部の修飾によっては影響されず、シアル酸のテール部分、特にC-8位の修飾によって反応性が消失した。【考察】以上から、一部のリンパ性白血病細胞には、テール部分に修飾を受けたシアル酸をもつシアリルLeが発現されていると考えられた。また、ヒト悪性細胞のシアリルLe、シアリルLeにはシアリダーゼ抵抗性のものも見いだされたので、現在その構造および生理的意義を検討中である。