ABSTRACT 1638(P6-3)
ets-1によるN-アセチルグルコサミン転移酵素V(GnT-V)遺伝子発現の制御:高 正憲、三善英知、野田勝久、池田義孝、谷口直之(阪大・医・生化)
Concomitant expression of GnT-V and ets-1 in human cancer cells and hepatoma tissues: Jeong Heon KO, Eiji MIYOSHI, Katsuhisa NODA, Yoshitaka IKEDA, and Naoyuki TANIGUCHI (Dept. of Biochem. Osaka Univ. Med. Sch.)
【目的】GnT-Vは、N型糖鎖の分岐鎖構造を決定する糖転移酵素の一つで、癌の転移に関与することで注目されている。我々は、本酵素のプロモーター領域の解析とゲルシフト法により、ヒト胆管癌細胞におけるGnT-Vの遺伝子発現が、転写因子ets-1により制御されることを証明した。そこで本研究では、多くの癌細胞株とヒト肝癌組織において、その普遍性を検討した。
【方法】16種類のヒト癌細胞と12症例のヒト肝癌組織を用いてets-1とGnT-Vの発現をノザン法で検討した。ets-1発現ベクターとdominant negative 型発現ベクターを遺伝子導入し、GnT-V発現の変化を検討した。
【結果】ヒト癌細胞においてGnT-Vの発現はets-1の発現と高い相関を示した(r=0.97, p<0.0001)。ets-1発現ベクターの導入によりGnT-VmRNAの発現が変化した。ヒト肝癌における検討では2症例を除き、GnT-Vの発現はets-1の発現と高い相関を示した(r=0.69, p<0.02)。
【結論】ets-1は癌細胞においてin vivo、in vitroともにGnT-Vの発現を制御し、転移能に関与することが示唆された。