ABSTRACT 1643(P6-3)
家族性大腸腺腫症(FAP)における癌関連糖鎖抗原と各種糖転移酵素の発現の解析:西原祥子1,平賀恒男1,池原譲1,諸角強英2,工藤崇1,成松久1(1 創価大生命研細胞生物,2 福生病院外科)
Quantitative analysis of carbohydrate antigens and glycosyltransferase gene expression in colorectal tissues of patients with familial adenomatous polyposis: Shoko NISHIHARA1, Tsuneo HIRAGA1, Yuzuru IKEHARA1, Kyoei MOROZUMI 2, Takashi KUDO1, Hisashi NARIMATSU1(1 Inst.Life Sci. Soka Univ., 2 Div. Surg. Fussa Hosp.)
(目的)癌化により細胞表面の糖鎖抗原は大きく変化し、癌関連抗原となっている。CA19-9抗体によって認識されるsLeaやsLexを含むシアリルルイス抗原は、大腸癌の有効な腫瘍マーカーとなっている。また、Leb抗原も左結腸癌で上昇する。我々は、大腸癌において7種類の糖転移酵素の発現が増加する傾向にあることを、すでに報告している。癌化のどの段階からこれらのルイス抗原や糖転移酵素の発現に変化をきたすのかを明らかにするめ、家族性大腸腺腫症症例に対して以下の実験を行った。(方法)1) 各患者のLewis酵素とSe酵素の遺伝子型をPCR-RFLP法により決定した。 2) 癌部、腺腫部、非癌部の標本を用いて、sLex、sLea、Leb抗原の免疫染色を行った。3) 各部位のsLex、sLea、Leb抗原量を、Western blotting解析により定量した。4) 各部位のルイス抗原の合成に関わると考えられる11種の糖転移酵素の発現量を、competitive RT-PCR法により定量した。(結果と考察)1) sLex、sLea、Lebなどのルイス抗原は、癌部のみならず、腺腫性病変でも顕著に増加した。非癌部と診断された正常な粘膜にも、sLexとsLeaの発現が認められ、 家族性大腸腺腫症では、過形成の段階から細胞表面糖鎖の変化が起こっていることがわかった。2) 糖転移酵素の発現の上昇は、腺腫性病変から認められた。発現が上昇する糖転移酵素は、先に報告した7種類に含まれていたが、線腫部位により異なっていた。癌化への段階で、発現が上昇する糖転移酵素の数が増し、より顕著な糖鎖抗原の変化を導きだすものと考えられた。