ABSTRACT 1644(P6-3)
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ヒト膵臓癌におけるシアリルルイス抗原の発現と各種糖転移酵素の解析:平賀恒男1,西原 祥子1,池原譲1,中森正二2,諸角強英3,,門田守人2,成松 久11創価大生命研細胞生物,2大阪大医学部第2外科,3,福生病院外科)

Quantitative analysis of sialylated Lewis antigens and gene expression of glycosyltransferases in pancreactic cancer : Tsuneo HIRAGA1, Shoko NISHIHARA1, Yuzuru IKEHARA1, Shoji NAKAMORI2, Kyoei MOROZUMI3,, Morito MONDEN2, Hisashi NARIMATSU1 (1Inst. Life Sci. Soka Univ., 2Div. Surg. Osaka Univ., 3,Div. Surg. Fussa Hosp.)

(目的)癌化により膵臓組織の糖鎖抗原は大きく変化し、癌関連抗原となっている。劇的に変化する抗原の一つにシアリルルイス抗原があり、sLea抗原は、膵臓癌や大腸癌の有効な腫瘍マーカーになっている。膵臓癌におけるシアリルルイス抗原の合成に関わる糖転移酵素の同定とその発現を明らかにするため、以下の実験を行った。(方法)1) 各患者のLewis酵素とSe酵素の遺伝子型をPCR-RFLP法により決定した。2) 癌部と非癌部の標本で、sLex、sLea、Leb抗原の免疫染色を行った。3) sLex、sLea、Leb抗原量を、Western blotting解析により定量した。4) シアリルルイス抗原の合成に関わると考えられる11種の糖転移酵素の発現量をcompetitive RT-PCR法で定量した。(結果と考察)1) sLex、sLea、Leb抗原は、どれも癌化により、顕著な増加を示た。非癌部の染色では、これらの抗原は小葉内膵管上皮に存在し、癌細胞が小葉内膵管上皮の幹細胞に由来することを示した。2) sLea抗原の発現はLewis酵素の遺伝子型に依存し、Lewis酵素がsLea抗原を合成していることがわかった。3) Se酵素の発現はLeb抗原量に相関し、H酵素ではなくSe酵素がLeb抗原量を決定していることがわかった。しかし、sLexとsLea抗原量は、4種のα2,3シアル酸転移酵素、3種のα1,3フコース転移酵素、β1,4ガラクトース転移酵素、コア2β1,6-N-アセチルグルコサミン転移酵素のどの酵素の発現量とも相関しなかった。sLex、sLea抗原量の膵臓癌における上昇は、上記以外の糖転移酵素により決定されていると考えられた。