ABSTRACT 1647(P6-3)
白血球系細胞におけるシアリルLexバリアントの分布と分子種および合成系路について:大森勝之1,光岡ちか子2,木村尚子2,井澤峯子1,神奈木玲児1(1京大医・臨床検査,2愛知がんセ・2病)
Expression and synthesis of variant type sialyl Lewis X determinant in human leukocytes: Katsuyuki OHMORI1, Chikako MITSUOKA2, Naoko KIMURA2, Mineko IZAWA2, Reiji KANNAGI2 (1Dept. Lab. Med., Kyoto Univ., 2Exp. Pathol., Aichi Cancer Ctr.)
我々は、白血球系細胞のセレクチンリガンド、シアリルLexに多様性があり、特ににヘルパーメモリーT細胞には、古典的抗シアリルLex抗体で検出されず、一部の抗シアリルLex抗体でのみ検出されるvariant型シアリルLexが発現する事を報告してきた。今回我々は、従来variant型シアリルLexと呼んできた糖鎖の少なくとも一部が6-硫酸化シアリルLexである事を見出し、その分布、分子種および合成酵素について検討したので報告する。【方法】一連のvariant型およびclassic型抗シアリルLex抗体、抗6-硫酸化シアリルLex抗体G152,アシアロ型の6-硫酸化Lexに対する抗体、internal fucose抗原を認識するVIM-2, ACFH-18等を適宜交えて、ヒト末梢白血球における抗原発現をフローサイトメトリーにて解析した。さらに、variantシアリルLexの合成酵素を明らかにするため、6-硫酸基転移活性を有するリンパ系培養細胞株に、フコシルトランスフェラーゼFuc-TVIIおよびIVをトランスフェクトし、抗原発現を解析した。【結果】1)ヘルパーメモリーT細胞は、classic型抗シアリルLex抗体FH-6, SNH-3とほとんど反応せず、CSLEX-1とわずかに反応し、variant型の抗シアリルLex抗体2H5, 2F3, HECA-452と良く反応した。2)純品糖鎖を用いた検索で6-硫酸化シアリルLexがvariant型体と良く反応し、classic型抗体とは反応しない事から、これをvariant型抗原と疑い検索した所、特異抗体G152が、ヘルパーメモリーT細胞と反応する事が判明した。3)6-硫酸化シアリルLexはヘルパーメモリーT細胞以外に、好中球の一部、単球、NK細胞に分布していた。4)Fuc-TVIIのトランスフェクト細胞ではシアリルLexおよび6-硫酸化シアリルLexが発現され、Fuc-TIVのトランスフェクト細胞ではLexおよび6-硫酸化Lexに加えinternal fucose抗原が発現した。Fuc-TVII・IVのダブルトランスフェクト細胞では、VIM-2を除く上記全ての抗原が発現した。【考察】以上から、リンパ球系細胞の特定のサブセットに発現が認められていたvariant型シアリルLexの少なくとも一部が6-硫酸化シアリルLex系抗原であり、これは従来考えられてきたより広い範囲の白血球に分布し、Fuc-TVIIに加えてFuc-TIVも合成に関与する事が初めて判明した。