ABSTRACT 1713(P7-1)
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細胞接着阻害療法の検討:猟山一雄1, 福家洋子, 野村孝弘青森大 工 ,都立短大, 金沢大 がん研)

Development of anti-adhesive therapy : Kazuo RYOYAMA1,Yoko FUKE2, Takahiro NOMURA3 (1 Facul. of Engineer., Aomori Univ., 2Tokyo Metropol. Col., 3 Cancer Res. Inst., Kanazawa Univ., )

【目的】昨年、我々はアンカレッジ依存性がん細胞の生存・増殖は増殖因子より細胞外基質への接着に依存していることを示し、細胞の基質への接着阻害によるがん治療の可能性を示唆した。ペクチン等の物質はがん細胞の基質への接着阻害を介し、その増殖を阻害した。しかし、基質に接着した細胞の増殖をほとんど阻害しなかった。今回、基質に接着した細胞をその基質から遊離し、その増殖を阻害することを基準にいくつかの物質を検討した。
【結果】Polyanionic sulphonate で、増殖因子に結合することが知られているスラミンは細胞外基質に接着したがん細胞を遊離し、その増殖を阻害した。他のPolyanionic sulphonateは無効だが、抗EGF抗体はスラミンより強い作用を示した。これらの作用は血清により解除され、細胞遊離の程度は基質の種類により異なった。一方、がん細胞の増殖因子産生能は細胞が基質に接着しない時は接着する時に比べ低かった。さらに、Poly-HEMA処理した培養デッシュではアンカレッジ依存性がん細胞のみならず、非依存性がん細胞EL4 の増殖も阻害された。
【結論・考察】培養系から増殖因子を除去すると、アンカレッジ依存性がん細胞は細胞外基質への接着性を失い、その増殖が阻害される。このことは増殖因子を介するシグナル伝達系と細胞接着因子の存在状態との密接な関係を示す。さらに、がん細胞のアンカレッジ依存性の程度にかかわらず、細胞の増殖には細胞がなんらかに接着する必要があると考えられる。