ABSTRACT 1714(P7-1)
 ポスターセッション一覧 トップ 


ヒト乳癌細胞における増殖シグナル伝達と抗細胞死シグナル伝達:鈴木勝雄、高橋和秀(神奈川がんセ・研・生化学)

Growth signaling pathway and anti-cell death signaling pathway in human breast cancer MCF-7 cells: Katsuo SUZUKI, Kazuhide TAKAHASHI (Department of Biochemistry, Kanagawa Cancer Center Research Institute)

足場非依存性に増殖可能なヒト乳癌細胞株MCF−7における増殖シグナル伝達経路と浮遊状態での抗細胞死シグナル伝達経路の関係を解析した。低血清で2日間培養して細胞周期を同調した細胞を通常の培養皿に再播種すると、約1時間で基質への接着はプラトーに達する。接着した細胞のみを残してIGF−I添加培地に置き換えると約24時間後に同調したDNA合成の上昇が誘導される。DNA合成の開始はPI3K阻害剤で強く、またS6K阻害剤で弱く阻害されたが、MAPK活性化酵素阻害剤では阻害されなかった。一方、poly(HEME)コートにより基質への接着を完全に阻害してもIGF−I存在下で増殖可能な細胞を、低血清のまま24時間保温しても顕著なDNA断片化は見られなかった。この間PI3K、MAPK活性化酵素の阻害剤を添加しておいてもDNA断片化は誘導されなかった。以上の結果は、MCF−7細胞に対するIGF−Iの増殖シグナルはPI3Kと一部S6Kを経て伝達されるが、基質への接着欠如および低血清に抵抗する抗細胞死シグナルは、神経細胞などで報告されているPI3Kを介した伝達経路ではない可能性を示唆している。