ABSTRACT 1733(P7-1)
転移巣におけるc-met 遺伝子の発現上昇:今井順一,菅野純夫(東大・医科研・癌ウイルス)
Overexpression of c-met proto-oncogene at the metastasized lung: Jun-ichi IMAI, Sumio SUGANO (Dept. of Virology, Inst. of Med. Sci., Univ. of Tokyo)
【目的】癌が遠隔臓器へ転移する際、その臓器で癌細胞が増殖するためには、その臓器との相互作用に応じて様々な遺伝子の発現変化が起こっていると考えられ、それらの変化を理解することは癌転移を理解する上で重要である。われわれは、それら癌の転移巣において発現変化している遺伝子の探索を試みた。
【方法】MC-1 fibrosarcoma 細胞を8週齢のマウスC57BL/6へ尾静脈注射し、肺に転移巣を作らせた。14日後、正常マウスの肺、転移肺、MC-1 細胞よりtotal RNAを抽出し、Differntial Display法を用い転移肺で発現の上昇が見られるバンドをクローニングした。また、Northern blot analysis や免疫染色法により、mRNAレベルでの発現および転移巣における発現の部位を確認した。
【結果】得られたクローンをデータベースサーチした結果、c-metと一致した。免疫染色の結果からc-met の発現上昇はtumorで見られ、一方、そのligandであるHGF/SFはNorthern blot analysisの結果より発現の変化は認められなかったが、肺組織に特異的に発現していることが判明した。これらのことから、HGF/SF-Metシグナル伝達が癌転移の成立に何らかの関与していることが示唆された。