ABSTRACT 1799(P7-4)
口腔癌細胞の運動能及び蛋白分解酵素産生能に対するトロンボスポンジン(TSP)の影響:中島昌宗,林堂安貴,杉浦 剛,吉岡秀郎,占部一彦,松矢篤三(阪大・歯・口外1)
Participation of thrombospondin(TSP) in motility and proteolytic activity of oral squamous cell carcinoma : Masahiro NAKASHIMA,Yasutaka HAYASHIDO,Tsuyoshi SUGIURA, Hideo YOSHIOKA,Kazuhiko URABE,Tokuzo MATSUYA (1st Dept. Oral&maxillofacial Surgery, Osaka Univ. Faculty of Dentistry)
トロンボスポンジン(TSP)は血小板,血管内皮細胞や線維芽細胞によって産生される450kDaの細胞外基質蛋白で、他の細胞外基質蛋白に対して強い親和性を持つことや細胞接着を制御していることからがんの浸潤・転移との関連が指摘されている.我々はこれまでにTSPの口腔粘膜組織における発現を免疫組織学的に検索しTSPが上皮直下の結合組織に局在し上皮の悪性化に伴い発現が亢進することを明らかにしてきた.そして癌間質に高発現するTSPが扁平上皮癌細胞の浸潤に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられた.そこでTSPの口腔癌細胞の運動能及び蛋白分解酵素産生能に対する影響をそれぞれボイデンチャンバーの変法及びゼラチンザイモグラフィーにて検索した.その結果,TSPは癌細胞に対しhaptotaxis誘導活性を示した.さらにこのhaptotaxis誘導活性はTSPのC末端側にある細胞結合部位が関与していることが明らかになった.また,TSPは癌細胞のmatrix metalloproteinase9(MMP-9)産生を促進させるとともに活性化を誘導した.この作用は抗TGF-beta抗体を添加することによって抑制されることがわかった.