ABSTRACT 1804(P7-4)
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Calpain Inhibitor I (ALLNal) による血管新生の阻害:芦野洋美1,島村眞里子2,川島誠一1(都臨床研・1遺伝情報, 2化学療法)

Inhibition of angiogenesis by Calpain Inhibitor I (ALLNal) : Hiromi ASHINO1, Mariko SHIMAMURA2, Seiichi KAWASHIMA1 (1Dept. of Mol.Biol., 2Dept. of Cancer Therapeut., Tokyo Metropol.Inst. of Med.Sci.)

〔目的〕血管新生の阻止は、微小転移巣の増殖阻害に大きく寄与するものと期待されている。そこで我々は血管新生阻害物質を探索し、その阻害機序を検討することによって血管新生機構の解析を行っている。血管新生阻害物質で抗癌剤として臨床に用いられている合成黄体ホルモン、MPAが血管内皮細胞の産生する細胞外プロテアーゼ、Plasminogen activator (PA) 活性を大きく抑制すること、および種々のステロイドによる血管新生の阻害効力とPA活性の抑制とに相関関係があることを見出し、血管腔を伸展させるスペースを作り出すために細胞外プロテアーゼが重要であることを報告してきた。そこで更に、プロテアーゼの血管新生過程における役割を明らかにするため、細胞の増殖・分化に関与する細胞内プロテアーゼの血管新生の制御における役割を検討した。
〔方法・結果〕細胞膜裏打ちタンパク質や情報伝達の制御に関与していると考えられている細胞内主要プロテアーゼ、Calpainに注目し、Calpain Inhibitor I (ALLNal) の血管新生への作用を鶏卵漿尿膜を用いて検討した。ALLNalは濃度依存的に血管新生を阻害し、PAなどを阻害するSerine protease Inhibitorに比し著しく強い阻害効果を示した。またCalpain Inhibitor II (ALLMal) も同様に血管新生を阻止した。更にALLNalはウシ毛細血管内皮細胞のPA活性を制御することも見出した。
〔結論・考察〕以上の結果より、Calpainは、現在までに考えられている血管新生プロセスの内、PA活性の制御過程に関与しているだけなのか、あるいは全く未知の血管新生促進のシグナルに関与しているのか不明であるが、血管新生を促す機能を有しているものと考えられる。