ABSTRACT 1805(P7-4)
プロテアソームによる血管新生の制御:及川 勉1,中村正樹1,2,島村真里子1,大村 智3,,田中啓二1(1都臨床研・化学療法,2持田製薬・安全研,3,北里研)
The proteasome is involved in angiogenesis: Tsutomu OIKAWA1, Masaki NAKAMURA1, 2, Mariko SHIMAMURA1, Satoshi OHMURA3, Keiji TANAKA1 (1Dept. of Cancer Therapeut., Tokyo Metrop. Inst. Med. Sci., 2Toxicol. Lab., Mochida Pharm. Co., Ltd., 3,Kitasato Inst.)
血管新生は癌の増殖・浸潤,転移に深く関わっていることから,癌治療の新しい分子標的になると期待されている。我々は抗血管新生療法の確立に不可欠な血管新生阻害物質を探索し,いろいろな化合物が血管新生を抑制することを見出してきた。一方,血管新生に関与する細胞内機能分子に関しては不明な点が多い。今回我々は,血管新生制御機構におけるプロテアソームの役割を明らかにすべく,その特異的阻害剤であるラクタシスチンを用いて検討したので報告する。in vivo血管新生阻害作用は鶏胚漿尿膜法を用いて調べた。in vitro血管新生阻害作用は,培養血管内皮細胞を用いて管腔形成,プラスミノーゲンアクチベータ(PA)産生,細胞増殖に対する抑制作用を指標にして検討した。ラクタシスチンは鶏胚漿尿膜上の血管新生を用量依存的に抑制し,そのID50値は9.6 nmol/eggであった。そこで培養血管内皮細胞を用いて阻害作用機序を解析した。ラクタシスチンはマトリゲル上での管腔形成,PA産生を濃度依存的に阻害し,しかもこれらの阻害が血管内皮細胞内のプロテアソーム活性の抑制と一致した。以上の結果を総合すると,プロテアソームは血管新生発現時に細胞内機能分子として重要な役割を演じていると考えられた。