ABSTRACT 1817(P7-5)
 ポスターセッション一覧 トップ 


ヒト大腸癌におけるカルサイクリンの発現と浸潤・転移:小松 慶子1、中村 博行1、石黒 信吾1、船井 洋子2、亀山 雅男3、三好 淳4、明渡 均1(大阪成人セ・1研・研4部、病・2病理、3外、4科学技術振興事業団高井プロジェクト)

Expression of calcyclin in human colorectal adeno- carcinoma and its relationship to invasion and meta-stasis:Keiko KOMATSU1, Hiroyuki NAKAMURA1, Shingo ISHIGURO2, Yohko FUNAI2, Masao KAMEYAMA3, Jun MIYOSHI4, Hitoshi AKEDO1 (Depts.1Tumor Biochem., 2Pathol., 3Surgery, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 4Takai Biotimer Project ERATO/JST)

【目的】 カルサイクリン(Calcyclin/S100A6) は分子量10.5kDa のS100family に属するCa2+-binding protein であり、その生物学的作用についてはまだ十分には解明されていない。われわれはヒト大腸癌におけるカルサイクリンの発現と浸潤・転移との相関を検討したので報告する。
【方法】 タンパクの発現はWestern blotting法により行った。57例のヒト大腸癌のホルマリン固定・パラフィン包埋の病理標本を用いて、抗カルサイクリンモノクローナル抗体による免疫組織染色を行った。
【結果】 ヒト大腸癌および正常大腸組織におけるカルサイクリン蛋白の発現は大腸癌において9例中6例が正常よりも高かった。カルサイクリンは、正常大腸粘膜上皮細胞および腺腫細胞のゴルジ野に顆粒状に染色されたが、大腸癌では細胞質にびまん性に強く染色された。 臨床病理学的 factorでは、カルサイクリンの発現はリンパ節転移およびリンパ管浸襲と有意に相関した。大腸癌を中央部と先進部に分けるとカルサイクリンは先進部において有意に強く発現したが、増殖のマーカーである Ki-67抗原にはこの傾向はみられなかった。さらに肝転移例では、肝組織の染色は陰性であったが、大腸癌細胞は高率に強陽性に染色された。
【考察】 以上の事実は、大腸癌においてカルサイクリンの発現は増殖よりも浸潤・転移とくにリンパ節転移とリンパ管浸襲に関与していることを示唆している。