ABSTRACT 1818(P7-5)
大腸癌原発巣および肝転移巣におけるMatrix Metalloproteinase-9およびIV型Collagenの発現:田中宣威,恩田昌彦,瀬谷知子,古川清憲,高崎秀明,吉村和泰,山田岳史,高橋由至,小泉岐博,内藤善哉*,浅野伍朗*(日本医大・1外,*日本医大・2病)
Expression of matrix metalloproteinase-9 and type IV collagen in colorectal cancer and its liver metastasis: Noritake TANAKA, Masahiko ONDA, Tomoko SEYA, Kiyonori FURUKAWA, Hideaki TAKASAKI, Kazuyasu YOSHIMURA, Takesshi YAMADA, Yoshiyuki TAKAHASHI, Michihiro KOIZUMI, Zenya NAITO*, Goro ASANO*( First Dept. of Surg, and *2nd Dept. of Patho. Nippon Med. Sch)
【目的】大腸癌に対する治療上,肝転移は大きな問題であり,その機序を解明することは重要である.癌の浸潤・転移にはMatrix metalloproteinase(MMPs) による基底膜の破壊が重要な過程の一つであるとされる.MMP-9は基底膜の主構成成分であるIV型collagen(IVc)を分解し癌の転移・浸潤を促進する.そこで大腸癌肝転移症例の原発巣および肝転移巣におけるMMP-9,IVcの発現を検索し,これら因子の役割を検討した.
【方法】大腸癌肝転移47例の同一症例における原発巣と肝転移巣について,また年齢,性別,病理組織学的因子をmatchingした非肝転移症例原発巣をcontrolとして,MMP-9およびIVcの発現を免疫組織化学的に検索した.
【結果】1.原発巣におけるMMP-9の発現は肝転移症例で76.6%(36/47),controlで55.3%(26/47)とcontrolに比し肝転移症例で有意に高率であった(p<0.05).2.肝転移症例の原発巣におけるIVcの発現は34.0%(16/47)とcontrolの55.3%(26/47)に比し有意に低かった(p<0.01).3.肝転移巣におけるMMP-9,IVcの発現はそれぞれ63.8%(30/47),44.7%(21/47)で,MMP-9は原発巣に比し低下し,IVcは増加していた.4.MMP-9の発現は腫瘍先進部の癌細胞においてより強く認められ,これら癌細胞周辺のfibroblast,macro-phageにも発現していた.
【考察】大腸癌の肝転移には,原発巣における癌細胞とfibroblast,macrophageがautocrine/paracrineに相互作用してMMP-9を分泌し,基底膜のIVcを分解していることが示唆された.