ABSTRACT 1822(P7-5)
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末梢性肺腺癌における基底膜の変化
明石巧、中村恭一(東京医歯大・病理)
Basement membrane in the peripheral lung adeno-carcinoma : Takumi AKASHI, Kyouichi NAKAMURA (Dept.of Pathol., Tokyo Medical and Dental Univ)

末梢性肺腺癌は発育進展過程において腫瘍内に虚脱巣を形成し、さらに活動性の線維芽細胞の増生を伴った状態になると転移をきたし予後不良となることから、線維芽細胞の増生巣を腺癌の浸潤部と見なすことが可能である。癌の浸潤過程における重要な過程と考えられている基底膜の断烈、消失状態を肺胞構造の保たれた周辺部分、虚脱部、線維芽細胞の増生部にわけて、免疫組織学的に検索した.末梢性肺腺癌の凍結材料30症例において,周辺部分では30症例中6病変においてラミニンα3鎖の部分的な消失が認められ、α5鎖は1病変においてのみ部分的な消失が認められた。虚脱部は30症例中の7例に存在し,その内4病変においてラミニンα3鎖の部分消失が認められ、α5鎖は1病変においてのみ部分消失が認められた。線維芽細胞の増生巣では12病変中7病変においてラミニンα3鎖の消失が認められ、 α5鎖も6病変において消失が認められた。虚脱、線維芽細胞の増生という肺腺癌の進行過程において、α3鎖の消失がα5鎖に先行する形でラミニンが消失している頻度がより高くなっていた。RT-PCR法によって癌部におけるラミニンα3鎖遺伝子の発現を検索したところ、免疫組織学的にラミニンα3鎖の消失が認められた5例中4例において発現の減少が認められた。癌細胞におけるラミニン遺伝子の発現低下によるラミニンの消失が基底膜の崩壊につながり,癌細胞の間質浸潤の機転の一つとなり得ることが示唆された。