ABSTRACT 1823(P7-5)
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肺小細胞癌患者血中のトリプシン濃度上昇機構に関する検討:庄司晃1,2,宮田智1,越川直彦1,小倉高志2,安光英太郎1,小田切繁樹2,宮崎香11横浜市大・木原研,2神奈川循呼セ・呼内)

A possible mechanism for elevated trypsin level in sera of patients with small cell lung cancer: Akira SHOJI1,2,Satoshi MIYATA1, Naohiko KOSHIKAWA1, Takashi OGURA2,Hidetaro YASUMITU1 , Shigeki ODAGIRI2 and Kaoru MIYAZAKI1(1Kihara Inst. Biol. Res., Yokohama City. Univ., 2Div. Resp. Med., Kanagawa Cardio. Resp. Center)

[目的]胃癌や卵巣癌でトリプシン(以下Try.)が高発現し、これらの癌の浸潤・転移に関与することが示唆されている。我々は予備的実験で肺小細胞癌患者血清中のTry.が高値であることを見いだしたが、免疫組織学的研究では小細胞癌細胞によるTry.の発現は確認されていない。小細胞癌はautocrineな増殖因子としてGRP(gastrin releasing peptide)を分泌する。また、(1)GRPは膵外分泌細胞に作用しTry.分泌を亢進させる、(2)血管内皮細胞はTry.を合成・分泌する、という報告もある。本研究では小細胞癌が分泌するGRPにより血管内皮細胞によるがTry.分泌が促進され、血中Try.濃度が上昇するのではないかと考え検討した。
[方法](1)肺癌患者血清中のTry.濃度をRIA法で測定、GRPについては、血中で安定でGRPとほぼ同量で存在するProGRPをEIA法で測定した。(2)肺癌細胞のTry.の分泌、(3)人正常肺由来微小血管内皮細胞(HMVEC-L),線維芽細胞(NHLF),気管支上皮細胞(NHBE)にGRPを作用させTry.の分泌が誘導されるかを、無血清培地を用いたザイモグラフィーにより調べた。
[結果]Try.濃度は小細胞癌患者で有意に高値を示し、ProGRP濃度と弱い相関関係を認めた。ザイモグラフィーではTry.の分泌を認める癌細胞もあったが小細胞癌に特異的ではなく、胃癌などに比べても弱い発現であった。正常細胞ではHMVEC-LでGRPの作用により濃度依存的にTry.の分泌誘導を認めた。[結論]肺小細胞癌が分泌するGRPにより血管内皮細胞からTry.が分泌され、これにより癌の浸潤・転移が促進される可能性が示唆された。現在mRNAレベルや、GRPreceptorの検索、又、GRP以外の液性因子についても検討中である。