ABSTRACT 1828(P7-5)
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骨・軟部組織腫瘍の浸潤・転移に関わる要因の検討:有広光司,武島幸男,井内康輝(広島大・医・2病理)

Studies on various factors associated with invasion and metastasis of bone and soft tissue tumors:Koji ARIHIRO, Yukio TAKESHIMA, Kouki INAI (2nd Dept. of Pathol., Hiroshima Univ. Sch. of Med.)

〔目的〕骨・軟部組織腫瘍について、浸潤・転移に関わる生物学的特性についての報告は少ない。そこで近年、転移抑制因子として注目されるKAI-1、腫瘍の浸潤・増殖関連因子であるIGF及びHGFの受容体、骨芽細胞の分化・増殖に関わるBMP、更に炎症細胞の血管内通過に関与する可能性があるCD31の発現を種々の良悪性骨・軟部組織腫瘍で検討した。〔対象と方法〕骨肉腫12例、良性骨腫瘍6例(類骨骨腫、軟骨芽腫、軟骨粘液線維腫各1例、巨細胞腫3例)、悪性軟部組織腫瘍14例(悪性線維性組織球腫6例、骨外性Ewing肉腫3例、悪性神経鞘腫2例、先天性線維肉腫、胎児型横紋筋肉腫、胞巣状軟部肉腫各1例)及び良性軟部組織腫瘍6例(神経鞘腫3例、線維腫症3例)を対象とした。これら腫瘍の連続凍結切片を用いて、ABC法による免疫組織化学的染色を行なった。用いた抗体は、抗KAI-1抗体、抗IGF-IRα抗体、抗c-met蛋白抗体、抗BMP-2/4(Santa Cruz社製)、抗CD31抗体(DAKO社製)である。各糖蛋白質の発現は細胞膜あるいは胞体に見られた場合に陽性とした。〔結果〕骨腫瘍では、骨肉腫12例中8例(67%)にKAI-1の消失を認めたのに対し、良性腫瘍では6例中1例(17%)のみで消失した。また軟部組織腫瘍でも悪性腫瘍14例中8例(57%)で消失を認めたのに対し、良性腫瘍では6例中1例(17%)で消失した。一方、IGF-IRαは骨肉腫12例中4例(33%)に発現を認めたのに対し、良性腫瘍では6例中5例(83%)に発現した。更に、骨肉腫のうち他の骨への転移を示す4例では、転移を示さない8例と比較するとc-met蛋白が消失し、BMP及びCD31が発現する傾向があった。