ABSTRACT 1829(P7-5)
皮膚悪性黒色腫の転移に伴う遺伝子異常と腫瘍細胞クローンの変化:森田礼時、藤本晃英、八田尚人、高田 実(金沢大、皮)
Genetic alterations and clonal evolution during metastatic progression of cutaneous melanoma: Reiji MORITA, Akihide FUJIMOTO, Naohito HATTA, Minoru TAKATA (Dept. of Dermatol. , Kanazawa Univ. Sch. of Med.)
[目的] 皮膚悪性黒色腫の転移に関与する遺伝子異常を明らかにし、黒色腫の転移進展に伴う腫瘍細胞クローンの進展様式を知る。
[方法] 13例の原発腫瘍と転移腫瘍(リンパ節または皮膚転移)を対象として、1p, 6q, 7q, 8p, 9p, 10q, 11q, 17q, 18qのLOH, p16遺伝子変異およびp16蛋白の発現を調べ、両者における成績を比較した。
[成績] LOHのパターンは4例では原発巣と転移巣で同一であったが、2例では7qと17qのLOHが転移巣で新たに見い出された。一方、1例では原発巣は9pと8pのLOHを示したが、転移巣では9pのLOHのみが観察された。さらに別の1例では、原発巣は9p、リンパ節転移は9p、6q、11qのLOHを示したが、その後生じた皮膚転移には9pLOHのみがみられた。他の5例では原発巣転移巣ともにLOHは認められなかった。 p16遺伝子の体細胞変異は全例において検出されなかったが、3例では転移に伴うp16蛋白発現の消失が認められた。
[結論] 6q、7q、11q、17qのLOHおよびp16蛋白発現の消失が黒色腫の転移に何らかの役割を演じていることが示唆された。また、黒色腫の転移は原発腫瘍内の微少な腫瘍細胞クローンからも発生し得ること、遠隔転移は必ずしもリンパ節転移を経由して発生しないことが示された。