ABSTRACT 1848(P7-7)
大腸癌手術時における癌細胞の還流静脈血中への遊出に関する検討:辻 孝1,中村史朗1,久松 貴1,日高重和1,竹下浩明1,澤井照光1,安武 享1,中越 享1,綾部公懿1,田川 泰2 (1長崎大・医・一外, 2医技短)
Investigation for released cancer cells from the primary tumor into the draining vein in colorectal cancer surgery : Takashi TSUJI1, Shirou NAKAMURA1, Takashi HISAMATSU1, Shigekazu HIDAKA1, Hiroaki TAKESHITA1, Terumitsu SAWAI1, Toru YASUTAKE1, Toru NAKAGOE1 , Hiroyoshi AYABE1, Yutaka TAGAWA2 (1st Dept. Surg.1 and School of Allied Medical Sciences2, Nagasaki University)
(目的)K-ras mutationを指標として、大腸癌手術時における腸間膜静脈血および抹消血液中の癌細胞の有無を検討した。(対象と方法)対象は大腸癌44例。結腸癌23例、直腸癌21例で3/4以上はstageII 以上の進行癌。血管処理はD1レベル2例、D2レベル14例、D3レベル28例。術中採血した最中枢側の腸間膜静脈血と橈骨動脈血、切除標本(腫瘍部/正常粘膜)からDNA抽出、enriched-PCR法でK-ras codon 12 mutationの有無を検討。(結果)希釈実験により癌細胞の検出上限は正常細胞1000個中1個までであった。原発巣ではmutationは18例(41%)に認められ、stage 0が1例、Iが3例、IIが7例、IIIaが5例、IVが2例であった。同時性肝転移例では、原発巣・肝転移巣共にmutationが検出された。これら18例の腸間膜静脈血および橈骨動脈血ではmutationは認められなかった。(結語)大腸癌手術時において、腫瘍の還流静脈血中には1/103以上の比率では癌細胞は存在していない。肝転移形成に至る癌細胞(群)は、常に原発巣から供給されているのではなく、ある特定の時点(術前)でリリースされているものと考えられる。