ABSTRACT 1889(P7-9)
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ヒト肺癌細胞株を用いたリンパ行性自然転移モデルの確立: 小崎健一1,2, 宮石 理4, 立松義朗1,2, 塚本徹哉3, 高橋 隆1,21愛知がんセ・研・病態,2超微,31病理,4長寿研・老化機構・病理)

A Mouse Model of Lymphogenous Metastasis by Ectopic Propagation of a Human Lung Cancer Cell Line, H460-LNM35: Ken-ichi KOZAKI1,2, Osamu MIYAISHI3, Takashi TAKAHASHI1,2 (1Pathophysiol. Unit, 2Lab. of Ultrastructure Res., 3Lab. of Pathol., Aichi Cancer Center Res. Inst.; 4Lab. of Pathol., Dept. of Basic Gerontol., National Inst. for Longevity Sciences)

【目的】代表的な難治癌である肺癌の進展と予後を左右するリンパ節転移(リンパ行性転移)の分子機序の基礎生物学的研究に有用なリンパ行性自然転移モデル系の確立を試みた。
【方法及び結果】ヒト非小細胞性肺癌(大細胞癌)細胞株 NCI-H460をSCIDマウスに皮下移植し、in vivo selectionによって肺への高転移性亜株を分離する過程で、安定して確実に腋化リンパ節へ自然転移を生じるリンパ行性転移亜株 H460-LNM35を樹立する事に成功した。これまでに浸潤・転移過程への関与が報告されているマトリックス分解酵素(Gelatinase A及びB)とその特異的阻害因子(TIMP)や、各種インテグリンα及びβ鎖、並びにE‐カドヘリンやCD44等の細胞接着分子群の発現を、H460-LNM35と親株であるNCI-H460間で比較・検討したが、いずれの分子についてもその発現に差を認めなかった。
【考察】これまでに癌転移の基礎生物学的研究に用いられてきたモデル系は血行性の肺転移モデルが主であり、ヒト癌細胞株のリンパ行性転移モデルは極めて少なく、ヒト肺癌を用いた系は本モデル系が最初の報告例である。浸潤・転移に関わる分子の同定、さらにはその制御法の開発を目指す上で極めて有用と考えられる。