ABSTRACT 1894(P7-9)
硬変肝における肝癌の進展および転移様式の検討:山崎正晴,栗山茂樹,菊川政次,辻本達寛,美登路昭,奥田浩嗣,吉治仁志,富永謙太郎,福井 博(奈良医大・3内)
Analysis of invasive and metastatic behavior of hepatoma in cirrhotic liver: Masaharu YAMAZAKI,Shigeki KURIYAMA,Masaji KIKUKAWA,Tatsuhiro TSUJIMOTO,Akira MITORO,Hirotsugu OKUDA,Hitoshi YOSHIJI,Kentarou TOMINAGA,Hiroshi FUKUI (Third Dept.of Int.Med.,Nara Med.Univ.)
【目的】肝癌症例の多くは肝硬変を基礎に有し,高頻度に肝内転移を来す.そこで我々は,肝硬変マウスを作製し,硬変肝における肝癌の進展・転移様式を検討した.【方法および成績】(1) BALB/cマウスに0.2, 0.4, 0.6 mg/gのthioacetamide (TAA)を週2回腹腔内投与すると,グリソン鞘域(Zone 1)を中心に著明な炎症細胞の浸潤と肝細胞の変性壊死が惹起され,投与1週後での生存率はそれぞれ73.8%,50.0%,25.0%であったが,1週以降では死亡するマウスはほとんど認めなかった.(2) 0.2 mg/gのTAA投与群では,10週後にはZone 1を中心に著明な線維の増生を認め,20週後には肝硬変が完成した.(3) 蛍光色素(DiI)で染色した同系マウス由来のBNL1ME A.7R.1肝癌細胞(4×100,000 cells/10 microliters)をマウス肝被膜下に接種し,肝癌細胞の肝内における進展・転移様式を蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡下に観察した.正常マウスに比し肝硬変マウスでは,肝癌は速やかにZone 1を進展・発育した.さらに,肝硬変マウスでは接種1週後には,肝癌細胞を接種しなかったlobeのZone 1にも微小転移巣を認めたが,正常マウスでは3週後でも認めなかった.【結論】正常肝に比し硬変肝では,肝癌はZone 1を速やかに進展し早期より他のlobeへの転移を認めた.したがって,肝硬変の存在が肝癌の進展・転移を促進することが示唆された.