ABSTRACT 1908(P8-1)
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組織型の異なる卵巣癌由来の細胞株におけるムチン遺伝子と糖鎖の発現:玉田裕1,2、飯田真一郎2、青木大輔1、野澤志朗1、入村達郎21慶大医産婦人科,2東大院薬)
The expression of mucin genes and carbohydrates antigens by human ovarian carcinoma cell lines derived from tumors of different histological types: Yutaka TAMADA, Shin-ichiro IIDA, Daisuke AOKI, Shiro NOZAWA, Tatsuro IRIMURA (Dept. Obstet.&Gynecol., Fac. Med., Keio Univ., Grad. Sch. Pharm. Sci., Univ. Tokyo)

【目的】卵巣癌は、多様な組織型を有し、その各々における特徴的な病態を呈するため、組織型に応じた治療法の確率が望まれている。今回われわれは、17種類のヒト由来卵巣癌細胞株を用いて、6種類のムチンコア蛋白のmRNAの発現をRT-PCR法にて、6種類の糖鎖抗原の発現をフローサイトメトリーにて解析し、組織型における相違を見いだした。【結果】明細胞腺癌由来の5種類の細胞株は、MUC1の発現がみられたが、MUC2、3、5AC、5B、6の発現はみられなかった。糖鎖抗原ではシアリルルイスXの発現が特徴的で、Tn、sTnなどのムチン抗原はみられなかった。漿液性腺癌由来の6種類の細胞株では、全てにおいてMUC1が発現しているものの、一部の細胞株においてはMUC2の発現も認められた。糖鎖抗原の発現はほとんど認められなかった。粘液性腺癌由来の6種類の細胞株では、MUC1以外にもムチン遺伝子の発現が認められ、また糖鎖抗原の発現においても多様性が認められた。しかしながら、ムチン遺伝子と特定糖鎖の発現に関連は認められなかった。【考察】今回使用した各々の細胞株は元の組織型と同じ組織型を示すことがヌードマウスへの移植組織にて確認され、細胞株で認められた細胞表面分子の発現の特色は、元の腫瘍の生物学的特性を反映しているものと思われる。これらの結果は、卵巣癌の組織型における病態相違の解明に手掛りをあたえるものである。