ABSTRACT 1928(P8-3)
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消化器癌患者の全身的、癌局所におけるinterleukin-10 (IL-10)産生動態の検討:柴田昌彦、加納久雄、根津 健、竹川本夫、木村 知、永田靖彦、坂本明子、桜井健一、天野定雄、福澤正洋(日大・医・1外)

Systemic and local production of interleukin-10 in patients with gastrointestinal cancer: Masahiko SHIBATA, Hisao KANOU, Takeshi NEZU, Motoo TAKEKAWA, Tomo KIMURA, Yasuhiko NAGATA, Akiko SAKAMOTO, Ken-ichi SAKURAI, Sadao AMANO, Masahiro FUKUZAWA (1st Dept. of Surgery, Nihon Univ. Sch. of Med.)

IL-10は担癌宿主において細胞性免疫の抑制をもたらす一因として重要と考えられる。今回我々は消化器癌患者(胃癌32例、大腸癌31例)と健常成人31人を対象に、癌の進行ならびに癌局所における変動について検討した。これらを対象にIL-10の末梢血血清中濃度と末梢血単核球(PBMC)のIL-10産生能を測定し、癌所属リンパ節リンパ球(LNL:15例)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL:7例)のIL-10産生能を測定した。また悪液質患者5例については経時的にPBMCの産生能を測定し比較検討した。IL-10の血中濃度は悪液質患者で健常人、その他の患者群に比し高値であった。PBMCの産生能は各群間で有意の差が見られなかったが、悪液質患者の経時的観察で、癌死する約一ヵ月前に上昇することが認められた。各細胞の産生能を比較すると、LNLはPBMCより低値であり、この傾向は癌の深達度ss以下、あるいはリンパ節転移陽性の症例でより顕著であった。TILに関しては、PBMCより高いもの3例、低いもの4例であった。このようにIL-10は悪液質の病態と関連し、IL-10が関与する細胞性免疫能の抑制機構は癌局所よりむしろ全身的な産生動態が主体であると推測された。