ABSTRACT 1948(P8-3)
N-acetyl-L-cysteine (NAC) によるT細胞の IFN-γ 産生制御機構:Rishani Wijesuriya 1, Park Cheung Seog 1 、楊以阜 1 、山下元三 1、羽室淳爾 2 、 藤原大美 1、 濱岡利之1( 1 阪大・医・バイオセ・腫瘍発生; 味の素基礎研)
Mechanism underlying NAC-mediated regulation of IFN-γ production by T cells :Rishani WIJESURIYA 1 ,Cheung Seog PARK1 , Ii Fu YANG1, Motozou YAMASHITA1, Junji HAMURO2, Hiromi FUJIWARA1, Toshiyuki HAMAOKA1. ( 1Biomed. Res. Ctr., Osaka Univ. Med. Sch., 2 Basic Res. Lab., Ajinomoto Co.)
[目的]担癌状態におけるT細胞機能抑制の原因の一つにT細胞レセプター複合体のCD3ζ 鎖の消失が挙げられている。一方、最近NACがCD3ζ 鎖の発現を回復させ、T細胞機能を改善する報告がなされた。そこで今回、我々は抗腫瘍サイトカイン(IFN-γ /IL-12) 産生に焦点をあて、NACがそれらサイトカインの産生をどのように修飾するかについて検討した。
[方法]腫瘍には、BALB/cマウス由来線維肉腫CSA1Mを用いた。IFN-γ産生はELISA法で、IL-2産生はCTLL-2を使用したbioassayで、IL-12活性は抗体-capture assayで測定した。
[結果及び考察](1) 担癌マウス由来T細胞と抗原提示細胞(APC) の培養においては外来性腫瘍抗原を添加することなくIL-2、IFN-γの産生が誘導される。この培養系にNACを添加すると、IL-2の産生には影響がみられなかった一方、IFN-γ産生が強く抑制された。(2) 正常マウスのT細胞とAPCも抗CD3で刺激すると、IFN-γやIL-2を産生する。この系におけるサイトカイン産生へのNACの影響を見たところ、IFN-γ産生の選択的抑制を認めた。(3) IL-12は活性化T細胞によるIFN-γ産生を誘導する。そこで、抗CD3刺激T細胞とAPCの相互作用で産生されるIL-12産生量を測定したところ、IL-12産生もNACにより抑制されることが明らかになった。(4) IL-12は、活性化T細胞のCD40Lにより、APCのCD40分子が刺激される結果産生される。そこで、CD40L発現へのNACの効果を調べたが、影響はなかった。(5) IL-12はT細胞非依存性にLPS/IFN-γ 刺激によっても産生される。この経路でのIL-12産生もNACによって抑制され、NACが直接APCに働き、そのIL-12産生能を抑制することが確認された。以上、本研究によりNACは担癌状態の酸化ストレスによるT細胞機能抑制を改善する一方、抗腫瘍サイトカイン(IFN-γ /IL-12) 産生への抑制効果を生みだすというというNACの新しい作用が明らかになった。