ABSTRACT 1958(P8-3)
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膵癌細胞由来IL-6のin vivoでの腫瘍発育・転移形成への関与:矢野智之1, 2, 石倉浩1, 斎藤克憲2, 小川弥生1, 加藤紘之2, 吉木敬1 (北大・医・1第1病理, 2第2外科)

The effect of pancreas carcinoma derived IL-6 on growth and metastasis in vivo: Tomoyuki YANO1,2, Hiroshi ISHIKURA1, Katsunori SAITO2, Yayoi OGAWA1, Hiroyuki KATO2 and Takashi YOSHIKI1 (11st Dpt. of Pathology, 2 2nd Dpt . of Surgery, Sch. of Med. Hokkaido Univ.)

≪目的≫我々はヌードマウスを用いたヒト膵癌株の検討から経門脈血行性肝転移に膵癌IL-6産生性が逆相関することを明らかにしてきた. 今回は膵癌細胞由来IL-6の腫瘍発育・転移形成への関与の機序について検討したので報告する.≪方法≫IL-6非産生膵癌株PCI-43にlipofection法によりIL-6cDNAを導入し得られたIL-6産生PCI-43亜株を用い, マウスを用いた生体系に適用した. ≪結果≫腫瘤をコンスタントに形成する量の1/10量に相当する1x106個の各PCI-43亜株を皮下に接種したヌードマウス・SCID beigeマウスでの腫瘤形成性を検討した. IL-6高度産生PCI-43亜株(PCI-43h)接種群のみSCID beigeマウスにおいて腫瘤形成が認められ, 経過とともに増大した. ヌードマウスではPCI-43h接種群は接種直後に腫瘤形成を認めたものの, 2週後から徐々に退縮し3〜4週後より急激に退縮した. PCI-43h 1x106個とPCI-43 1x107個をヌードマウスの皮下に同時に接種した実験では接種24日後にPCI-43の腫瘍径の退縮をみた. ヌードマウスにおいて, PCI-43h接種後4週からPCI-43に反応する血清中IgGの出現が認められた. ≪考察≫今回の結果から, T・B両免疫不全のSCID系ではIL-6高度産生株を皮下接種すると増殖促進が, B細胞系の機能の, ある程度保たれるヌードマウス系においては, おそらくIL-6によるB細胞系活性化を通じて, 腫瘍反応性IgG産生が誘導され腫瘍の増殖を抑制すると推察した. 生体系でのIL-6の働きはこのように関与する免疫系の有無・質により大きな修飾を受けることが示唆された.