ABSTRACT 1970(P8-5)
正常ヒト肝内NK/NKT細胞の解析と細胞内グルタチオンの重要性:山内清明、露木茂、稲本俊、山岡義生(京大・外)
Analysis of normal human hepatic NK/NKT cells which require glutathione to function: Akira YAMAUCHI, Shigeru TSUYUKI, Takashi INAMOTO, and Yoshio YAMAOKA (Dept. of gastroenterological surg., Kyoto univ.)
【目的】我々はこれまでにラット肝硬変モデルを用いて、肝類洞内NK細胞の抗腫瘍能における重要性と、その細胞障害活性の発現に一定レベル以上の細胞内グルタチオン濃度が必要であることを報告してきた。今回は、ヒト肝類洞内NK/ NKT細胞の機能と活性化抗原との関連を解析し、サイトカインによる細胞障害活性増強の条件を細胞内グルタチオンの面から検討した。
【方法・結果】(1)生体部分肝移植の移植片より採取した正常ヒト肝内リンパ球は、サイトカインの添加培養なしにLAK様活性を有していた。(2)フローサイトメーターによる解析では、正常肝内NK/NKT細胞は約30%を占め、そのCD69陽性率は約90%、CD62L陽性率は約15%と活性化されていた。(3)肝硬変を伴う肝細胞癌の切除標本から採取した肝内リンパ球はLAK様活性は消失しており、同時に細胞内グルタチオン濃度が有意に低下していた。(4)肝細胞癌の切除標本から採取した肝内リンパ球では、IL-2によるLAK活性はほとんど誘導されなかったが、N-アセチルシステイン(NAC)の添加培養によりIL-2によるLAK活性の誘導は回復した。
【結論】(1)正常ヒト肝内NK/NKT細胞は常に活性化されており、その機能発現には細胞内グルタチオン濃度を一定レベル以上に保つ必要があること、(2)肝硬変で低下した肝内リンパ球の細胞障害活性はNACの添加で回復し、肝局所免疫にNACは有用であることが示唆された。