ABSTRACT 1978(P8-5)
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抗ガングリオシドGM2ヒト化抗体の抗腫瘍メカニズムの解析:中村和靖,花井陳雄(協和醗酵・東京研)

Evaluation of Anti-tumor activity of A humanized anti-ganglioside GM2 monoclonal antibody:Kazuyasu NAKAMURA,Nobuo HANAI(Tokyo Res. Labs., Kyowa Hakko)

【目的】抗ガングリオシドGM2ヒト化抗体(抗GM2ヒト化抗体)は、ヒト腫瘍のマウス移植モデル系において腫瘍生着阻害、腫瘍増殖阻害、さらには腫瘍転移抑制活性を示し、抗腫瘍免疫療法への応用が期待されている。今回、その抗腫瘍メカニズムを解析する目的で、生体内により近い三次元培養系であるスフェロイドの増殖に対する抗GM2ヒト化抗体の影響を検討した。【方法】温度感受性ポリマーであるポリNイソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)を用いてヒト小細胞肺癌株SBC-3とヒト真皮由来線維芽細胞株HDFより成るヘテロスフェロイドを作製した。ヘテロスフェロイドを10〜20μg/mlの抗GM2ヒト化抗体を含む培養液で培養し、その増殖を経時的に観察した。また、培養開始後、7日目、14日目のヘテロスフェロイドを用いて抗GM2ヒト化抗体、GM2およびアポトーシスの検出を行った。対照としてGM2陰性ヒト胃癌細胞株MKN-28を用いて同様の実験を行った。【結果】抗GM2ヒト化抗体の添加により、ヘテロスフェロイドの増殖抑制が観察された。14日目のヘテロスフェロイドでは、SBC-3とHDFの特徴的な局在が認められ、抗GM2ヒト化抗体の添加により、最外層に存在するSBC-3の増殖が抑制された。抗GM2ヒト化抗体はヘテロスフェロイド内部への移行、局在が観察されたが、部位特異的なアポトーシスは検出されなかった。これら抗GM2ヒト化抗体の作用は、SBC-3の単層培養およびMKN-28では観察されず、SBC-3の三次元的な増殖にはGM2が極めて重要な役割を果たしており、その機能阻害が抗GM2ヒト化抗体の抗腫瘍メカニズムの一つであることが示唆された。