ABSTRACT 1984(P8-5)
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慢性肝炎マウスにおける肝炎発症機構の解明:
岡本俊博,三谷弘明、山川富雄,仲野善久,原薫,山村研一、樋野興夫日本ケミファ研究所, 2癌研・実験病理部、熊本大・医・遺伝発生)

The mechanism of the induction of chronic hepatitis in mouse: Toshihiro OKAMOTO1, Hiroaki MITANI2,Tomio YAMAKAWA1,Yoshihisa NAKANO1, Kaoru HARA1, Kenichi YAMAMURA3, Okio HINO2

ヒト慢性肝炎状態は「遺伝子変化が生じやすく、また蓄積しやすい組織の状態」であり、高癌化状態(hypercarcinogenic state)と定義さる。ヒト肝発癌のrate limiting stepである慢性肝炎の発症機構の解明は分子標的をめざし、高癌化状態から低癌化状態(hypocar-cinogenic state)に導くヒト肝癌の発生の予防につながるものと考える。そこで今回、ヒト慢性肝炎の疾患モデルであるIFNγトランスジェニックマウス(Proc Natl Acad Sci USA.91:614-618,1994)におけるFas ligand-Fas antigen 系について検討したので報告する。Fas antigen mRNAは正常マウスの肝臓でも発現していたが、トランスジェニックマウスの肝臓ではこの発現が増強していた。さらに、Fas ligand mRNAは正常マウスでは検出できなかったがトランスジェニックマウスの肝臓では検出された。したがって、トランスジェニックマウスの肝臓ではFas ligand-Fas antigen 系が発現されていることが示された。また、CD8は細胞障害性T細胞のマーカーでありトランスジェニックマウスの肝臓に強く発現していた。さらにlymphoid cellの浸潤がpiecemeal necrosisの部位に観察され、lymphoid cellにより肝障害が誘発されている可能性が示唆された。したがって、lymphoid cellの肝障害誘発機構としてFas ligand-Fas antigen系が作用している可能性がある。IFNγトランスジェニックマウスはこの系を研究するうえで有用なモデルと考えられる。