ABSTRACT 1988(P8-6)
大腸癌細胞におけるcyclooxygenase-2発現の好中球・マクロファージの浸潤能・活性化に及ぼす影響:辻井正彦1、辻 晋吾1、川野 淳1、Raymond N.DuBois2、堀 正二1(1阪大・医・一内、2バンダービルト大・医・消化器科)
Msahiko TSUJII, Shingo TSUJI, Sunao KAWANO, Raymond N. DuBois, Masatsugu HORI1 (11st. Dept. of Med. Osaka Univ. Sch. of Med., 2Vanderbilt Univ. Med. Ctr. Gastroenterology.)
[目的]近年大腸腫瘍の発生と進展にcyclooxygenase-2 (COX-2)が関与している可能性が注目されている。今回、大腸癌細胞におけるCOX-2発現の好中球・単球の浸潤能・活性化に及ぼす影響をin vitroで検討した。 [方法] COX-2遺伝子をヒト大腸癌培養細胞Caco-2に導入し、stable transfectantを作成した。invasion chamberのouter chamber内でCaco-2細胞を、inner chamber内でヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を培養した。両細胞ともconfluentになった時、cocultureを開始し、末梢血より単離した好中球又は単球をinner chamber内に加えた。好中球・単球のHUVECへの浸潤能、iNOS発現能、及びHUVECのICAM発現能を検討した。更に、Caco-2細胞におけるGM-CSF mRNA発現、培養上清中のIL-8の濃度についても検討した。 [結果] Caco-2細胞でのCOX-2発現に伴い、cocultureしたHUVECのICAM-1の発現は抑制され、cocultureした好中球・単球の浸潤能・iNOS発現能も抑制された。COX-2発現により、Caco-2細胞でのGM-CSF産生には差はみられなかったが、IL-8産生は著明に抑制され、COX-2特異的阻害剤のNS-398により、IL-8産生の用量依存性に増加した。 [結語] 大腸癌細胞におけるCOX-2の発現は、サイトカイン分泌や血管内皮細胞における接着因子の発現に影響を及ぼし、好中球・単球の浸潤能・活性化を抑制した。COX-2発現は免疫系を抑制することにより、大腸癌の発生と進展に関与する可能性が示唆された。