ABSTRACT 1989(P8-6)
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胸腺組織構築とケモカインSDF-1の密接な関係:鈴木元1,中田有紀子1,中川憲一1,長嶋和郎21放医研,放射線障害医療,2北大,第2病理)

Close relationship between SDF-1 expression and tissue organization in the thymus : Gen SUZUKI1, Yukiko NAKATA1, Kenichi NAKAGAWA1, Kazuo NAGASHIMA2 (1Div. Radiat. Hlth., Natl. Inst. Radiol. Sci., 2Second Dept. Pathol., Hokkaido Univ.)

[目的]ケモカインは、細胞の走化を誘導する生理活性物質である。ケモカインには、炎症に伴って発現誘導されるケモカインと、組織において構成的に発現しているケモカインがある。SDF-1は、造血組織やリンパ組織などで構成的に発現しているケモカインであるが、その生理的意義に関しては充分解明されていない。本研究では、胸腺におけるSDF-1遺伝子およびそのレセプターCXCR4の遺伝子・タンパク発現を検討する中から、ケモカインと胸腺組織構築の関連を検討した。[方法]胸腺細胞膜上のCXCR4は、SDF-1-Cγ1融合タンパクの結合を指標に、FACSで解析した。遺伝子発現は、ノーザン法およびRNAプローブを用いた in situ hybridization 法により検討した。[結果]SDF-1遺伝子は、胸腺の皮質全体とりわけ皮膜直下の領域に強く発現している。CXCR4遺伝子も同様の組織分発現分布をとる。CXCR4タンパクは、未分化なCD44+CD25-DN胸腺細胞の段階からCD3loDP胸腺細胞の段階まで発現している。ポジティブセレクションを受け、皮質から髄質に移行する段階のCD69+DP細胞は、CXCR4発現を失う。以上の結果は、SDF-1が胸腺細胞の組織分布を制御している可能性を強く示唆している。