ABSTRACT 1990(P8-6)
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大腸腺癌における腫瘍浸潤T細胞の表面マーカーの検討。ヒト大腸腺癌とAOM化学発癌によるラット消化器癌の比較検討:
松田俊二(国立呉病院・臨床研究部)

Analysis of Tumor infeltrating T lymphocytes in colon cancer. Comparison of human colon adenocarcinoma and rat AOM-induced intestinal adenocarcinoma: Shunji MATSUDA (Inst. of Clin. Res., Kure Natl. Hosp.)

[目的]消化管組織には全身性免疫機構とは異なる免疫機構(粘膜免疫機構)があると考えられている。消化管上皮細胞より発生する大腸腺癌細胞とこの粘膜免疫機構との関係はいまだ明確ではない。今回、正常消化管粘膜のT細胞と腫瘍浸潤T細胞の表面マーカーの比較をヒト大腸腺癌組織とAOM化学発癌によるラット消化器癌組織を用いて行った。
[方法]外科的に摘出したヒト大腸癌組織と近傍の正常組織およびAOM誘導ラット消化器癌の組織をもちいて、PLP固定後、免疫組織染色法によりT細胞の表面マーカーを調べた。抗体はCD4、CD8、TCRなどに対するマウスモノクローナル抗体を用いた。
[結果]ヒト大腸高分化腺癌では腫瘍浸潤細胞にCD4陽性、TCRαβ陽性T細胞の比率の上昇がみられた。しかし、ラットAOM-誘導腫瘍組織では浸潤細胞の表面マーカーの比率は正常組織と類似していた。
[考察]ヒト大腸高分化腺癌で増加するCD4陽性、TCRαβ陽性T細胞は炎症反応、腫瘍特異的反応などが考えられるが、今後の詳細な検討、またラット消化管腫瘍組織の浸潤細胞との相違につき検討が必要と考えられる。