ABSTRACT 2038(P9-3)
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B 細胞におけるtransforming growth factor beta (TGF-beta)の細胞増殖抑制機序の解析(II):亀崎 洋,西沢 きみ子(愛知がんセ・研究所・放射線部)

Analysis of the mechanism for TGF-beta-mediated growth inhibition of B cells (II): Hiroshi KAMESAKI, Kimiko NISHIZAWA (Lab. of Exp. Radiol., Aichi Cancer Center Res. Inst.)

[目的] TGF-betaは、cyclin-dependent kinase4 (Cdk4)の発現抑制や、p21(WAF1)蛋白の発現誘導等により上皮細胞の増殖を抑制すると考えられているが、B細胞では、 TGF-betaはCdk4やp21(WAF1)蛋白の発現レベルには影響せず、p27(Kip1) mRNA及び蛋白の発現誘導によりB細胞の増殖を抑制することを昨年の本学会において報告した。今年度は、マウスB細胞株CH31を用いて、p27(Kip1)蛋白の発現誘導機構をさらに詳細に検討した結果を報告する [方法・結果・考案] p27(Kip1) mRNAの半減期はTGFbetaを添加しても変化なく約1時間で、TGF-betaによるp27(Kip1) mRNAの誘導は、p27(Kip1)遺伝子の転写の促進によるものと考えられた。また、p27(Kip1)蛋白の合成率及び分解率の検討からも、TGF-betaによるp27(Kip1)蛋白の誘導は、蛋白合成促進によることが示唆された。上記の結果から、転写の促進がp27(Kip1) mRNA及び蛋白の発現誘導に重要であると考えられたので、従来よりTGF-betaの増殖抑制シグナルへの関与が示唆されているp53の、p27(Kip1)遺伝子の転写制御における役割を検討した。まずCH31細胞に発現されているp53蛋白の状態を、p53 cDNAのsequencingにより検討したところ、単一のmutant p53蛋白を発現していた。次にこのmutant p53の転写活性化能を検討したところ、wild-type p53に比して著しく低下していた。また、X線を照射しても、CH31細胞ではwild-type p53に依存して転写誘導される遺伝子(GADD45等)の発現増強は観察されなかった。従って、TGF-betaによるp27(Kip1)遺伝子の転写促進はp53蛋白の転写活性化能に依存しないと考えられた。