ABSTRACT 2044(P9-3)
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MAPキナーゼ/AP-1を分子標的とした治療法の開発:織本健司, 樋野興夫(癌研・研・実験病理)

Development of molecular target therapy against MAPK/AP-1: Kenji ORIMOTO and Okio HINO(Dept. Experimental Pathology, Cancer Institute)

遺伝性腎癌ラット(Eker rat)の原因遺伝子は、ヒト結節性硬化症(Tuberous sclerosis; TSC)の病因遺伝子(TSC2)のrat homologueであり、Tsc2遺伝子は癌抑制遺伝子の機能を有する。 Eker rat腎癌細胞ではAP-1の恒常的活性化が認められ、AP-1アンチセンスオリゴヌクレオチドにより増殖が抑制されることから、 Eker rat腎癌発生機構にAP-1が重要な役割を果たしていることが示唆された。今回我々は、 Eker rat腎癌細胞におけるAP-1の活性化機構について検討した。近年AP-1の活性化の制御にMAPキナーゼが重要な役割を果たしていることが知られている。Eker rat腎癌細胞で三種のMAPキナーゼ(MAPK)の活性化状態について検討した。Eker rat腎癌細胞ではERKの恒常的活性化が認められ、Tsc2の発現に伴い、ERKおよびAP-1の活性化が抑制され、Tsc2がMAPK/AP-1を介する情報伝達経路に重要な役割を果たしていることが示唆された。 また、AP-1阻害剤として知られるAll-trans retinoic acid (ATRA)はin vitro(培養細胞系)およびin vivo(ヌードマウス腫瘍移植系)においてEker rat腎癌細胞の増殖を著しく抑制した。以上の結果から、Eker ratはMAPK/AP-1を分子標的としたsignal transduction therapyの有用な治療モデルになると考えられる。