ABSTRACT 2048(P9-3)
STAT1結合配列のデコイオリゴヌクレオチドはEGFによる細胞周期の停止を阻害する:大坪正史1,蒲生 忍1,2,清水信義1(1慶應大・医・分子生物,2杏林大・保健・生物)
Decoy oligonucleotides of STAT1 binding site prevents EGF-induced cell cycle arrest in A431 cells : Masafumi OHTSUBO1, Shinobu GAMOU1,2 and Nobuyoshi SHIMIZU1 (1Dept. Mol. Biol., Keio Univ. Sch. Med., 2Dept. Biol., Kyorin Univ. Sch. Health Sci.)
[目的]我々は先に、上皮増殖因子(EGF)レセプターを過剰発現する扁平上皮癌細胞A431をEGFで処理するとWAF1遺伝子の転写が誘導され細胞周期が停止することを示した。さらにWAF1遺伝子の5'領域に対する18-merオリゴヌクレオチドを導入するとWAF1蛋白の発現もEGFによる細胞周期の停止も見られないことを示し、EGF刺激後、速やかに転写されるWAF1が、EGFによる細胞周期の停止の主要分子であることを示した。今回、WAF1の発現促進に関予する因子を転写因子結合配列のデコイを用いて検討した。[方法]WAF1遺伝子プロモーター上の3ヶ所のSTAT1結合部位(SIE1,2,3)などの転写因子結合部位のオリゴヌクレオチドを合成し二重鎖化してデコイとして用いた。デコイはEGF刺激前6時間と刺激直後にリポフェクション法で導入した。細胞周期の停止は細胞数を計数し評価した。[結果と考察]EGF処理の前後で翻訳開始部位にもっとも近いSIE1部位のデコイを導入した場合には細胞増殖の回復が認められなかった。上流のSIE2とSIE3部位のデコイを導入した場合には、約30%の増殖の回復が認められた。この時、WAF1蛋白の発現も同程度に抑制された。3カ所のデコイの混合物、STAT1結合配列コンセンサスをEGF処理の前後に導入した場合にも、濃度依存的な増殖の回復が認められた。p53結合配列、AP1結合配列、C/EBP結合配列コンセンサスに対するデコイを導入した時には増殖の回復は認められなかった。以上の結果より、STAT1がWAF1遺伝子プロモーター領域に結合し、転写を促進することが示唆された。現在、STAT1により誘導される他の細胞周期停止および細胞死に関する因子の発現動態についても検討中である。