ABSTRACT 2056(P9-4)
ヒト乳癌におけるエストロゲンレセプター遺伝子のメチル化による発現調節:吉田 崇1,3,江口英孝1,中西京子1,中地 敬1,東 靖宏2,末益公人2,森下靖雄3,飯野佑一4,林 慎一1(1埼玉がんセ・研,2病・乳外,群馬大・3二外,4救医)
Inhibition of estrogen receptor gene expression by methylation of the promoter in human breast cancer: Takashi YOSHIDA1, Hidetaka EGUCHI1, Kyoko NAKANISHI1, Kei NAKACHI1, Yasuhiro HIGASHI2, Kimito SUEMASU2, Yasuo MORISHITA3, Yuici IINO4, Shin-ichi HAYASHI1 (Saitama Cancer Ctr. 1Res. Inst., 2Breast Surg., Gunma Univ., 32nd Surg., 4Emerg. and Crit. Care Med.)
乳癌の内分泌療法には抗エストロゲン薬が使用されるが、効果があるのはエストロゲンレセプター(ER)陽性のものに多い。ERは有力な予後因子であり、その発現機構の解明は臨床的にも重要である。ER遺伝子の5'上流域には、CpG islandが存在し、この領域はメチル化による制御をうける可能性が以前から示唆されていた。我々は以前、ER陽性乳癌ではプロモーターB(ProB)からの転写が特異的に亢進していることを報告した。今回、ProBのメチル化とERmRNAおよび蛋白質の発現との関連をヒト正常乳腺、乳癌および培養細胞を用いて検討した。メチル化の検出は、メチル化感受性制限酵素を用いたRFLPにより行った。正常乳腺およびER陽性の乳癌において、ProBは、低メチル化状態にあった。特にER>100の高値例では、ほとんどメチル化を受けていなかった。一方、ER陰性の乳癌では、高メチル化状態にあった。さらに培養細胞でもProBのメチル化とERmRNAの発現は逆相関を示した。これらのことから、乳癌のホルモン依存性の消失機構の一つとして、ER高発現に重要なProBのメチル化による発現抑制が考えられる。