ABSTRACT 2059(P9-4)
エストラジオールとその代謝産物によるシリアン・ハムスター胎仔細胞の形質転換と染色体変異:田村友起子, 筒井健機(日本歯大・歯・薬理)
Cell transformation and chromosomal alterations by estradiol and its metabolites in cultured Syrian hamster embryo cells: Yukiko TAMURA, Takeki TSUTSUI (Dept. of Pharmacol., Nippon Dental Univ., Tokyo).
エストロゲン発がんのinitiationにエストロゲンの遺伝毒性が関与しているかどうかを検討する目的で,培養シリアン・ハムスター胎仔(SHE)細胞を用いて, エストラジオール(E2)とその代謝産物の細胞形質転換活性と染色体変異誘起性を調べた. その結果, E2, estrone(E1), 2-hydroxyestrone(2-OH E1), 16α-hydroxyestrone(16α-OH E1), 2-hydroxyestradiol(2-OH E2), 4-hydroxyestradiol(4-OH E2)やestriol(E3)処理によって,SHE細胞の増殖能は濃度依存的に抑制された. その阻害効果は2-OH E1≒2-OH E2>4-OH E2>E2>E1≒16α-OH E1≒E3であった. E3を除いたすべての化合物によって,SHE細胞の形態形質転換が誘導された. 形質転換活性は,2-OH E1≧16α-OH E1≒2-OH E2≒4-OH E2≧E2≒E1≫E3であった. 染色体の構造異常は2-OH E1, 2-OH E2や4 - OH E2の最高濃度作用群においてのみ観察された. 一方,染色体の数的異常はE2, 2-OH E2, 4-OH E2や16α-OH E1作用群で誘導された. これらの結果は,複数のE2代謝産物がE2と同等もしくはそれ以上の形質転換活性をもつことを示し,この形質転換活性の高揚は,代謝産物の遺伝毒性,すなわち,染色体の構造異常や数的異常誘起性に起因している可能性がある.