ABSTRACT 2074(P9-5)
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甲状腺腫瘍におけるTGF-βおよびTGF-β-Rの発現について:今村好章,三好憲雄,福田 優(福井医大・1病理)

Analysis of TGF-β and TGF-β-R in thyroid neoplasms: Yoshiaki IMAMURA,Norio MIYOSHI,Masaru FUKUDA (1st Dept. Pathol., Fukui Med. Univ.)

【目的】我々は種々の甲状腺腫瘍を用いて、TGF-βおよびTGF-β-Rの発現に組織型による差があるかどうかについて検討した。
【材料と方法】196例(濾胞腺腫:38例、濾胞癌:42例、乳頭癌:83例、未分化癌:33例)のホルマリン固定パラフィン包埋甲状腺腫瘍のTGF-β1、TGF-β3、およびTGF-β-RIIのmRNA発現についてriboprobeを用いたin situ hybridization法により検索した。また、抗TGF-β-RII抗体を用いた免疫染色によるTGF-β-RII蛋白の発現についても併せて検討した。
【結果】TGF-β1 mRNAは1例の未分化癌を除いたすべての甲状腺腫瘍で発現していた(195/196: 99.5%)が、悪性度が増すにつれ染色強度は強い傾向にあった。TGF-β3 mRNAは196例中148例(75.5%)で陽性で、濾胞癌で最も発現率が低値を示した(30/42:71.4%)が、染色強度にはTGF-β1 mRNAと同様の傾向がみられた。TGF-β-RIIのmRNAと蛋白の発現率はそれぞれ84.2%(165/196)、78.6%(154/196)であり、in situ hybridization法のほうがやや高い感度を示した。また、TGF-β-RIIのmRNAと蛋白の発現率は悪性度の高い癌でより低い傾向にあり、特に未分化癌ではTGF-β-RII蛋白の喪失が33例中19例(57.6%)に認められた。また、TGF-β-RIIのmRNAと蛋白の染色強度も濾胞腺腫より、癌で減弱していた。
【まとめ】TGF-β-RIIの発現の喪失は、TGF-βの増殖抑制効果からの逸脱を引き起こすと考えられる。それゆえ、TGF-β-RIIの発現の喪失が甲状腺腫瘍のprogressionに重要な役割を果たしている可能性が示唆された。