ABSTRACT 2121(P10-2)
乳癌組織型別に見た再発形式と腫瘍マーカーの特徴:斉藤光江1,坂元吾偉2,霞富士雄1
(1癌研・病院・乳腺外科,2癌研・研・乳腺病理)
Correlation between tumor marker and recurrent site of each histological subtype of Breast Cancer: Mitsue SAITO1, Goi SAKAMOTO2, Fujio KASUMI1 (1Dept.of Breast Surgery, Jpn. Fdn.Cancer Res.,2Dept.of Breast Pathol.Jpn.Fdn.Cancer Res.)
<目的>腫瘍マーカーは、癌の再発を表わす良い指標として期待されながら、具体的な評価方法については極めて曖昧なのが現状である。生物学的態度と照らし合わせたマーカーの綿密な追跡調査が長期にわたって必要な由縁である。<方法>そこで我々は再発調査を終えた1984年当院手術症例433例につき、再発形式と腫瘍マーカー(CEA, CA15-3)の関係についてまとめてみた。<結果>13年間で再発は100例で全体の23%、うち追跡調査充分な94症例について経過中一度でもCEAの上昇をみたもの67.5%、CA15-3については77.2%で、どちらか一方でも上昇のあったものは87.3%であった。臓器別には、肝転移に対するCEAの感度が81,6%、胸膜転移に対するCA15-3の感度が84,8%と極めて高く、上昇を見ない再発は、肝転移でCEAの上昇しなかった症例の57%、胸膜転移でCA15-3の上昇しなかった症例の60 %は充実腺管癌(a2)であり、全再発症例中のa2の比率(21%)を大きく上回っている事が判った。また両マーカーとも正常のままの事が多い再発臓器は脳、皮膚で、リンパ管侵襲が強い症例を除けばほぼ全例がa2である事が判った。<考察>マーカーの上昇パターンと再発臓器、組織型を比較検討することによって、乳癌全体をひとまとめに評価した場合に得られなかった興味深い知見を得たことは、今後、多様性を踏まえて癌と向き合っていく上で大きな指針となるであろうと考えられた