ABSTRACT 2230(P12-2)
植物色素中キノン系とくにアントラキノン類のin vitroにおける抗腫瘍性:小出龍郎1,橋本洋子2,岡野恒一3,長谷川誠4, 亀井秀雄4,小島卓5,(愛知学院大・1保健セ・歯・2生化,3放,4外, 5愛知医科大・一外)
Effect of quinones,anthraquinone,on tumor growth suppression in vitro:Tatsurou KOIDE1, Yoko HASHIMOTO2, Tsuneichi OKANO3, Makoto HASEGAWA4, Hideo KAMEI4,Takashi KOJIMA5(1Health Res. cent.,Aichi-Gakuin Univ.,2Dept.Biochemist.3Dept.Radiology, 4Dept.Surgery,Aichi-Gakuin Univ.Sch.of Dent., 5Dept.Surg.1, Aichi Med.School)
[目的]植物色素の一種であるキノン類はベンゾキノン,ナフトキノン,アントラキノンとベンゼン核の数により大別されるが,これ等のキノン類についてヒト由来培養癌細胞株にたいする抗腫瘍性を検討した.
[方法]培養細胞株にはヒト大腸癌由来のHCT-15細胞およびヒト胃癌由来のAGS細胞を用いた.ベンゾキノン系のArubutin,ナフトキノン類のJuglone,Lawson,アントラキノン系のAlizarin,Emodin,Xantho-neを使用した.メタノール中各濃度に希釈した色素と細胞を四日間培養したのち,細胞数を測定して増殖抑制度を比較した.
また色素存在下に培養後二日後に細胞を採集してflow cytometryによるヒストグラムから各細胞周期に及ぼす影響を検討した.
[結果および結論] ベンゾキノン類では軽度の抑制効果を示したがアントラキノン類が最も著明な抑制効果を示した.その著明なものの50%抑制率は10μg/ml以下であった. アントラキノン類のなかでもXanthoneなどのようにOH基のないものは抑制率が低く,抑制率の程度にOH基の数及び結合位置が関与しているものと示唆された.
ヒストグラムの検討による細胞周期への影響をみたが,アントラキノン類中AlizarinではS期の障害が強く,EmodinではG1期からS期への移行障害がみられ,キノン類の種類によりそれぞれ特有のパターンを示した.
以上植物色素は前回に発表したフラボノイド類のみならずキノン系においても癌細胞増殖抑制効果がある.しかしキノン系色素中ベンゾキノン,ナフトキノンには細胞毒性,皮膚などへの刺激性などを示すものがあり問題点が残るが,他の植物色素も含めて動物の腫瘍細胞抑制に深く関連しているものの多いことが推測できた.