ABSTRACT 2242(P12-3)
新規ヒストンデアセチラーゼ阻害薬MS-27-275の癌細胞に対する作用:鞠子幸泰1、齋藤明子1、山下俊1、土屋克敏2、安藤知行2、鈴木常司2、鶴尾隆3、中西理1(1三井製薬・生科研、2三井化学・ライフサイエンス研、3東大・分生研)
Biological effects of a novel histone deacetylase inhibitor, MS-27-275, on tumor cells: Yukiyasu MARIKO1, Akiko SAITO1, Takashi YAMASHITA1, Katsutoshi TSUCHIYA, Tomoyuki ANDO, Tsuneji SUZUKI2, Takashi TSURUO3, Osamu NAKANISHI1(1Inst. Biol. Sci., Mitsui Pharm. Inc., 2Life Sci. Lab., Mitsui Chem. Inc. 3Inst.Mol.Cell Biol., Univ. Tokyo)
【目的】ヒストンのアセチル化を制御する酵素ヒストンデアセチラーゼ(HDA)の阻害剤である酪酸ナトリウム(NaB)やトリコスタチンA(TSA)は癌細胞に対して分化誘導することが知られており、分化誘導療法への応用が期待されている。しかしこれらの化合物については、作用の弱さや体内動態の悪さから、これまでのところ満足なin vivo抗腫瘍効果は報告されていない。我々はこの欠点を補う新たなベンズアミド系HDA阻害化合物MS-27-275を見出し生物活性を検討した。【結果】本化合物は、ヒト癌細胞より部分精製したHDAを阻害し、細胞内の核ヒストンの高アセチル化を引き起こした。また白血病細胞K562や卵巣癌細胞A2780に対しては分化形質を誘導した。本化合物処理により、細胞はG1/SとG2/Mで細胞周期を停止し、p21やp27などのCDKインヒビターや、gelsolinなどの誘導が認められた。HDA阻害活性を持たない類似化合物ではp21などの誘導は認められず、分化誘導や細胞増殖阻害も示さなかった。したがって、MS-27-275の細胞に対するさまざまな作用はHDA阻害作用に起因するものと考えられる。