ABSTRACT 2281(P12-7)
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新規インドロカルバゾール系抗腫瘍剤 J-107088のヒトおよびマウス腫瘍に対する治療効果:荒川浩治、森田匡史、西村暹(萬有製薬・つくば研究所)

Therapeutic effects of a new antitumor indolocarbazole, J-107088 on human and murine tumors in mice: Hiroharu ARAKAWA, Masashi MORITA, Susumu NISHIMURA (Banyu Tsukuba Res. Inst.)

 J-107088 は、本学会で既報 (第 52、53 回) の NB-506 の誘導体である。NB-506 はトポイソメラーゼ I を選択的に阻害した。J-107088 も同様にトポイソメラーゼ I を選択的に阻害するが、その活性は NB-506 よりも 5 倍以上強い。動物実験において、NB-506 の至適投与スケジュールは、連続投与であった。一方、J-107088 の至適投与スケジュールは、間欠投与であった。 ヌードマウスに移植した LX-1 (肺癌)、MX-1 (乳癌)、 PC-3 (前立腺癌) に対し 33 mg/kg の静脈内投与で各々 77%、 91%、 88% と各種のヒト癌に対し強い腫瘍増殖阻害効果を示すのみならず、高投与量においては、体重減少等重篤な副作用症状は示さず、腫瘍退縮効果を示した。J-107088 の至適投与スケジュールにおける致死量と薬効投与量の比 (安全域) は NB-506、タキソール、シスプラチン、アドリアマイシンと比べ 40 倍以上広く、実験に供した薬剤の中で最も広い安全域を示した。さらに、33 mg/kg の J-107088 投与により、多剤耐性白血病細胞 (P388/ADM) 移植マウスを完全治癒した (60 日生存)。また、IMC-HM 細胞を用いた微小肝転移モデルにおいても J-107088 は 25 mg/kg の投与で原発巣の退縮効果を示したのみならず、微小肝転移巣における細胞増殖をも阻害し、強い延命効果を示した。以上の結果より、J-107088 は、ヒト腫瘍細胞、多剤耐性細胞、微小転移モデル等の実験腫瘍において強い抗腫瘍活性を示し、他の抗がん剤と比べ安全域の広いことから、臨床における抗腫瘍効果を期待させる。