ABSTRACT 2312(P12-11)
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シスプラチンの殺細胞機構に関する研究 −細胞周期停止とアポト−シス誘導−:木津良一,喜谷喜徳金沢大・薬,名市大)

Cell killing mechanism of cisplatin − cell cycle arrest and apoptosis induction − : Ryoichi KIZU1, Yoshinori KIDANI2 (1Fac. of Pharm. Sci., Kanazawa Univ., 2Nagoya City Univ.)

【目的】シスプラチン(CDDP)を初めとする多くの白金錯体が優れた制癌効果を示すが、殺細胞機構は未だ明らかではない。本研究では、CDDP による細胞周期停止とアポトーシス誘導について検討した。
【実験】マウス P388 細胞及びその CDDP 耐性細胞(P388/DDP)を CDDP の IC90 値で処理し、死細胞数及びアポトーシス細胞数を計数した。細胞周期は、細胞を PI 染色し、FACScan により解析した。M期細胞は、MPF (M期促進因子、cyclin B/Cdc2 複合体) 活性から評価した。
【結果・考察】P388/DDP 細胞に比べて P388 細胞では、全細胞に占める死細胞の割合、死細胞に占めるアポト−シス細胞の割合がともに高かった。また、CDDP とともにカフェインで処理すると、死細胞及びアポトーシス細胞の割合は増加した。P388 細胞及び P388/DDP 細胞ともに、CDDP 処理開始後 24 時間までに細胞周期は G2/M 期に停止した。G2 期から M 期への進行を観察する目的で、MPF 活性の経時変化を追跡した。両細胞ともに MPF 活性は経時的に上昇し、G2 に停止した細胞の一部は M 期へと進行していることが明らかになった。MPF 活性はP388/DDP 細胞に比べ P388 細胞でより高く、カフェイン処理を加えると MPF 活性は一層高くなった。また、両細胞をアドリアマイシンで処理した場合は、細胞周期は G2/M で停止したが、MPF 活性の上昇は見られず、死細胞・アポト−シス細胞も僅かであった。以上の結果から、CDDP による細胞死の主な経路として、細胞は DNA 損傷を認識して G2 期に一旦は停止するが、損傷を残したままM期へと進行し、アポトーシスに至る経路が考えられた。